当サイトではページの一部においてアフィリエイト広告を利用しています

犬のカーミング・シグナル(20)口をパクパクさせる――犬が見せる“激レア”な気持ちの整理術

口をパクパクさせる(Gasp the Mouth)

  • 嫌がる気持ちを抑えているのではないかと思われるシグナル
使用頻度★☆☆☆☆(激レア)

はじめに:「パクパク」は犬の心のサイン

犬のボディランゲージにおいて非常に珍しく、飼い主が気づきにくいものがあります。

そのひとつが「口をパクパクさせる」しぐさです。

これは、まるでしゃべるかのように一瞬で犬が口を数回パクパクと開閉させる動きで「Gasp the Mouth」(ガスプ・ザ・マウス)と呼ばれることもあります。

多くの飼い主が「喉が渇いているのかな?」「呼吸が乱れている?」と誤解しがちですが、じつはこのしぐさには深い意味が込められていることがあります。

この記事では、この「激レア」なボディランゲージの背景にある犬の気持ちを読み解きながら、飼い主としてどう接すればよいのかを考えていきます。

カーミング・シグナルとは?

犬たちは他の犬や人とのコミュニケーションにおいて、視覚的・身体的なサインであるボディランゲージを通じて自らの感情や意図を伝える能力を持っています。

その中でも「カーミング・シグナル」(calming signals)は、自分や相手の緊張を和らげるための「平和のサイン」として知られています。

「カーミング・シグナル」はノルウェーのドッグトレーナー、トゥーリッド・ルガース氏が提唱した概念で、犬の27〜30種類の行動がカーミング・シグナルとして挙げられています。

「口をパクパクさせる」行動は、その中でもなかなか使いこなせる犬が少ない、いわば“激レア”なサインのひとつです。

「口をパクパクさせる」はどんなときに出る?

「口をパクパクさせる」動きは、犬が“嫌だけど我慢している”ときに出やすい傾向があります。「テンパっている」と表現すると分かりやすいかもしれません。

つまり、犬自身がその場から逃げることも、吠えることもせず、自分のなかで折り合いをつけようと努力しているのです。

以下のような状況で見られることがあります。

苦手な人や犬が接近したとき

「嫌だな、でも吠えたくはない」と葛藤しているとき、犬は穏便にその場をやり過ごす方法としてこのしぐさを見せることがあります。

嫌なことをされそうなとき

注射や爪きり、シャンプーなど、自分が苦手なことに耐えなければならないとき、犬は緊張のあまり口をパクパクさせて気持ちを整理しようとします。

叱られたとき

強く叱られた直後、犬がこのしぐさを見せることがあります。

これは服従のサインではなく、「今の状況をどう受け止めようか」と気持ちを整えようとしている証かもしれません。

写真撮影や注目されているとき

スマートフォンを向けられたり、多くの人に注目されたときなど、犬が居心地の悪さを感じると、このしぐさが出ることがあります。

飼い主としてどう接する?

このしぐさを見かけたとき、飼い主に求められるのは“正しく読み取る力”と“そっと見守る姿勢”です。

環境を確認する

何が愛犬にプレッシャーを与えているのかを周囲から探り、必要に応じて距離を取るなどの配慮をするべきかどうかを判断します。

ただし、生活を送るうえで必要な行為について過度に避けるのはよくありません。

過干渉を避ける

無理に話しかけたり撫でたりすると、犬の心の整理を妨げる可能性があります。

少し待ってあげる

犬が自分で気持ちを整える時間を尊重しましょう。

そうすることで愛犬の自制心やストレス耐性が高まります。

他犬がこのしぐさを見せたときは?

ドッグランや散歩中に遭遇した他犬が「口をパクパク」したのを見たら、その犬は何らかのストレスを感じている可能性が高いです。

このような場面で、飼い主と愛犬がとるべき行動は以下のとおりです。

無理に近づかない

自分の愛犬をその犬に近づけたり、挨拶させるのは避けましょう。

相手の空間を尊重する

そっとその場を離れる、もしくは距離を取って見守るなど、平和的な対応を心がけましょう。

安心させるカーミングシグナルを発する

愛犬の行動が相手にプレッシャーをかけていないでしょうか?

もし、穏やかに対峙できていなければ、飼い主が誘導して愛犬にカーミングシグナルを使わせて相手の犬に安心感を与えてあげます。

「レアなシグナル」こそ見逃さない

「口をパクパクさせる」という行動は使用頻度が極めて低く、知らない人も多いかもしれません。

しかし、この小さなサインの裏には、犬の精一杯の自己コントロールと、関係を壊したくないという優しさが込められています。

まとめ:犬の小さなサインに気づく心を

犬は言葉を話しません。

しかし、表情やしぐさのひとつひとつにその心の内が表れます。

「口をパクパクさせる」という行動は、とくに人間が見逃しやすいものですが、犬が自分の気持ちを整理するための貴重なサインです。

私たち飼い主がすべきことは、こうした小さなサインに気づき、そっと寄り添うこと。

犬との信頼関係は、こうした日々の積み重ねの中で深まっていくのです。

カーミングシグナル全30種

関連記事
LINEでSuzyに質問!

この記事を読んでもっと知りたいことや疑問が沸いてきたら、以下のページからLINEのお友達登録のうえチャットでSuzyにご質問ください。

Shizuka “Suzy” Ishida

2005年より東洋思想をベースにした「ごほうびにオヤツを使わない犬のしつけ方」を提唱。吠える・噛むの問題を抱えた小型犬のしつけを得意としていますが、保護犬の心のリハビリもしています。当サイトで提示しているしつけ方法はすべての犬に100%当てはまるものではありません。性格や状況によって対処方法はさまざまです。お試しになる際はあらかじめご理解のうえお願いいたします。

同じテーマの記事はこちら