ペットショップやブリーダーから子犬を買ってきて、ワクチン接種を済ませ、ようやくお散歩デビューをしたと思ったら、あっという間に生後6カ月くらいになっています。
まだまだ可愛い赤ちゃんだと思っていたのに「思春期」と聞いて、驚く飼い主さんはたくさんいらっしゃいます。
犬にも思春期がある
犬にも思春期があるのです。
思春期といっても、人間の子どもとはまたちがった対応が必要になってきます。
なぜなら、人間の子どもはいずれ自立して家を出ていく存在ですが、犬は最期の日まで飼い主に生活のすべてを依存し、寿命を迎える生き物だからです。
この「我が子」の将来のちがいをしっかりと理解したうえで、それぞれの思春期を取り扱っていかなければいけません。
いつから思春期になる?
だいたい、身体的に性成熟が始まる生後6カ月前後から思春期に入ります。
和犬などは比較的早い時期から始まる傾向があり、生後4カ月くらいからその片鱗を見せ始める子もいます(もちろん、犬種に限定したものではありません)。
一方で、遅咲きの子もいて、2歳ちかくなってから突然訪れることもあります。
本当に個人差が大きいです。
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思春期になったら
子犬期から思春期になった犬たちには、どのような変化が訪れるのでしょうか?
今までのやり方が通用しなくなる
パピークラスに通って教えてもらい、子犬のうちは上手くいっていたしつけ方法に反発する子も出てきます。
犬の思春期は、飼い主さんが戸惑ってしまう時期なのです。
今後の愛犬との関係が決まるとても重要な時期
これまでの考え方を一度リセットして、本格的に愛犬のしつけに時間を割くときです。
思春期のしつけの成功いかんで、今後十数年間にわたる飼い主と犬の関係が決まるとても重要な時期となります。
思春期の犬に起こること
思春期になった犬たちには、以下のような変化がはじまります。
- ほかの犬から大人扱いされはじめる
- 繁殖の本能が目覚める
- 家族を試しはじめる
ほかの犬から大人扱いされはじめる
子犬には子犬特有の匂いがあり、その匂いがするあいだは大人の犬たちは手加減をして相手をしてやります。
しかし、成長するにつれてだんだんと子犬の匂いがしなくなっていきます。
飼い主が「うちの犬はまだまだ赤ちゃん」だと思っていても、生後6カ月前後には身体が大人に成長しはじめ、性成熟を迎えて大人になります。
子犬の匂いが減っていくと、周囲の犬たちから「大人の犬」としての振る舞いを求められるようになります。
すると、子犬の頃だったら許してもらえた行為も相手が許してくれなくなります。
犬社会のマナーを身につける時期
この時期に犬社会のマナーをきちんと身につけることができないままだと、この先ほかの犬と仲良くなることができず、お散歩中に他の犬に吠え掛かる・噛みつくなどの行動が始まっていきます。
こうなると、犬も飼い主も散歩のたびに緊張を強いられ、飼い主が思い描いていたドッグライフからは程遠くなってしまいます。
今まで飼い主さんから見て「ウチのコはほかの犬と仲良くしていた」ように見えたのは、ほかの犬たちが子犬の礼儀知らずな行動を「まだ子どもだから仕方ない」と大目に見てもらっていただけのことなのです。
犬社会のルールを教えるのは飼い主
日本国内で流通するほとんどの子犬はこうした「犬社会のルール」を学ぶことなく母犬と別れ、犬社会のルールを学ばないまま人間の家族と生活を始めることになります。
このため、人間の飼い主さんが母犬に代わって「犬社会の礼儀」を教えてあげなければなりません。
しかし、人間である私たちは生まれつき「犬社会の礼儀」を身につけていません。
このとき自ら学ぶことができる犬はごくまれです。
飼い主は「犬」の育て方について学び、それを愛犬に教えていかなければなりません。
今後、愛犬の一生(十数年間)を周りの犬を避け・怯えながら暮らすのか、正しい付き合いを学び、身につけ、楽しい生涯を送るのかは、飼い主さんの努力にかかっているのです。
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繁殖の本能が目覚める
生後、半年くらいになるとオスもメスも性成熟が始まります。
人間の子どもは10年ほどかかりますが、犬はたったの半年でここまで成長してしまいます。
男の子のばあい
メス犬の発情に意識が向き始めます。
動物の欲求として「食欲・睡眠欲・性欲」があります。
動物にとって「性欲」は食欲や睡眠と並列で語られるほど強烈な欲であるということを理解する必要があります。
人間が思う以上に犬たちの繁殖欲は強く命がけで行なわれる行動です。
このため、性成熟を迎えたオス犬たちは、発情中のメス犬の匂いに居ても立ってもいられず、
- 食事をとらなくなる
- イライラする(飼い主に噛みつくなど)
- 眠れない・吠える
- 脱走する
といった行動をとるようになります。
ご存じのとおり、犬は嗅覚にすぐれていて、数キロ先の1滴の血の匂いも分かるといわれています。
あなたの愛犬が暮らしている周辺には、ほぼ確実に、いつでも発情中のメス犬が必ず存在していて、あなたの愛犬はそのニオイに24時間翻弄されているのだと知ってください。
このほかに、思春期の男の子には以下のような行動も始まります。
- マーキング(足を上げて少量のオシッコをいろいろな場所にかける)
- オス犬とのケンカ(野生の世界では強い者に繁殖の権利があるため)
日々、こうしたストレスにさらされることは犬にとってつらいものです。
精神的に繁殖欲から解放されリラックスして生活を送るために「去勢手術」が必要になってきます。
「去勢は可哀そうだ」と、去勢手術に反対する男性の飼い主さんも少なくありません。
しかし、繁殖欲によるストレスを発散できないまま生き続ける苦しさを男性だからこそ想像して頂きたいのです。
女の子のばあい
男の子とは異なり、年に2回の発情期以外はいつもと変わらない生活ができます。
しかし、発情期に入るとオス犬同様にイライラしたり、食事をとらなくなったりします。
また、妊娠が成立しなくても「偽妊娠」といって、おっぱいが大きくなったり、母乳が出たり、巣作りの行動をとったりすることもあります。
発情のたびにこうした心身の変化の波にさらされることはやはり負担が大きいものです。
子犬を産ませる予定がなければ、女の子も「避妊手術」をすることで、こうした心身のトラブルから解放されます。
また、年を重ねるにつれて未避妊のメス犬は乳腺や子宮の病気にかかるリスクがあります。
若く元気なときに麻酔の不安から避妊手術を避けた結果、若いときよりも体力が落ちてから、麻酔をかけて子宮蓄膿症の手術を受ける羽目になったメス犬たちを数多く見てきました。
「飼い主の気持ち本位」ではなく、犬の暮らしをトータルで考え愛犬にとって本当に良い選択をして頂きたいです。
家族を試しはじめる
犬は群れで暮らす生き物です。
群れの優劣が自分の生存に直結するため、自分の属する群れが安心して自分の一生を任せられる群れなのか?ということを非常に重要視します。
自分の一生を任せられる飼い主か?
大人に差し掛かる思春期にはこうした意識が芽生え始め、この飼い主に自分の一生を任せられるのかどうかをテストし始めるのです。
簡単にいうと、どれくらい自分のわがままが通るのか?を量ろうとします。
具体的には、以下のような行動によって行なわれます。
わざとごはんを残す
一般的に生後6カ月前後あたりから、パピーの頃とくらべて必要なカロリーが減ってきます。
体重に比して食べる量は減ってくる時期なのです。
また、避妊・去勢手術をする犬も多い時期で、避妊・去勢手術後は性ホルモンの衝動による行動が減少することにより、さらに必要なカロリーが減ります。
食事を残しているのを見て、「大変!ウチのコ、食欲ないみたい」と美味しいトッピングを追加したり、1粒ずつ手で食べさせるなどしてしまうと、たちまち愛犬の信頼を失います。
愛犬は「ダメなものはダメ」と、ちゃんと言ってほしいのです。
先に述べたように、食事の量は減る時期です。
制限時間内に食べないなら片付けてしまって、次のごはんの時間まで出さないほうが愛犬からの信頼を勝ち取れます(片付けても、要求されるたびに出していては信頼を失います)。
痩せすぎているのにご飯を食べられない「まれなケース」もある
一方で、食が細すぎて痩せすぎているばあいは、内臓の病気や障害を疑ってみることも必要かもしれません。
犬の肥満度チェックは「ボディ・コンディション・スコア(BCS)」を参照します。
とりあえず嫌がってみる
今まで、さして抵抗することもなく受け入れていたささいなこと(お散歩後の足ふきや爪切り、歯みがきなど)をされるときに、とりあえず嫌がってみせます。
嫌がるからといってやめてしまうと、たちまち愛犬の信頼を失います。
「やらなければいけないことは、ちゃんとやり切ってほしい」と言っているのです。
唸る・噛みつく(ふりをしてみる)
たとえ嫌なことであっても、お散歩後の足ふきや爪切り、歯みがきや投薬などのように「犬が家庭で生活するために」必要なことであれば我慢して受け入れなければいけません。
愛犬の命と健康を本気で守る
愛犬にしつけをする第1の目的は、ずばり「愛犬の命と健康を守るため」です。これをお話すると、「ソンナノ、アタリマエジャン…」と、拍子抜けされる飼い主さんがほとんどです。ですが、その飼い主さんが「愛犬の命を守るしつけ」が、ちゃんとできているかというと、そうじゃなかったりします。た...
このとき、嫌がってみせても飼い主が折れないとき、唸ったり噛みつく真似をしたり、本当に噛みついてくることもあります。
それに対して、飼い主がひるんだり怖がったりして引いてしまうと、やはり愛犬からの信頼を失います。
「この程度のことでビビるようであれば、自分の一生を任せるわけにはいかないぞ」と、思ってしまうのです。
飼い主をアウト判定したらどうなる?
このように、思春期を迎えた犬たちは、さまざまな試し行動によって飼い主を品定めします。
その結果、「この人たちに自分の一生を任せるのは不安だ…」と、思ってしまったらどうなるでしょうか?
この人たちを立派な「犬」に育てなければ!
先に述べたように犬は群れで暮らす生き物であり、本能的に群れのために役に立ちたいと考えます。
このため、ひとたび自分の属する群れ(飼い主の家族)が頼りないと判断すると、自分たちの家族を(犬目線で)立派な群れにするため、飼い主を立派な犬に育てようと思ってしまうのです。
そして、愛犬が飼い主家族を「弱い群れ」判定すると、飼い主からは愛犬が以下のような問題を起こすようになったと感じます。
言うことを聞かない
自分がリーダーになって、飼い主を育てようと思っています。
飼い主の言い分は聞きません。
インターホンや来客に吠える
この群れは弱いので、外敵は追い払わねばなりません。
よその犬に吠える
上記に同じ。
飼い主への不信感が原因
つまり、愛犬が思春期を迎えてから、飼い主が困ると思う犬の行動は、こうした飼い主への不信感から生じている行動となります。
もちろん、これとは別に性衝動による問題もありますので、思春期のしつけは「避妊去勢」と並行して行っていきます。
思春期の犬たちが学ぶべきこと
心身の変化にともない、思春期の犬が学ぶべきことは以下の2つになります。
- 犬社会の礼儀を身につける
- 忍耐力を身につける
先に説明したとおり、思春期の犬が身に付けなければいけないことは、犬の独力で習得することは難しいのです。
この過程を飼い主がフォローしてあげることで愛犬の信頼を勝ち取ることができるのです。
具体的な内容・方法については、別の記事で紹介していきたいと思います。
飼い主は「成犬向けのしつけ」にシフト
愛犬が思春期に差し掛かったら飼い主は1日もはやく愛犬を心理的に援助する方法を知り、身につけなければいけません。
これができるかどうかが、愛犬の一生を左右するといっても過言ではありません。
今までのやり方がうまくいかないと感じ始めたら、「思春期のしつけ」にシフトしましょう。
世に出回る犬のしつけ情報のほとんどは「子犬用」
子犬を飼い始める前後が飼い主が一番「犬のしつけ」に意欲をもっている時期です。
また、子犬はまだ個性による個体差が少ないうえ身体が小さく力も弱いため、行動に問題があっても飼い主が力で対処できてしまいます。
このため、画一的な内容でも多くの飼い主と犬を対象にできることから、本の出版やパピークラス等のしつけ教室が商業的に可能となっています。
思春期のしつけはオーダーメイド
しかし、思春期を迎えるころには家族をはじめとした環境の影響を受けて、性格や個体差が出てきます。
このため、個々の犬と飼い主に応じて対処の方法が変わってくるため、最大公約数的な内容の情報が役に立たなくなり、本やネット、パピークラスなどで得られる情報をもとにしつけをしてみてもうまくいかなくなってくるのです。
そして、「いろいろな方法があるけれど、どれを信じたらいいかわからない…」と、飼い主さんは途方に暮れ、愛犬のしつけをあきらめてしまうことになります。
思春期のしつけを教えてくれるトレーナーは少ない
犬のしつけ教室や訓練所の多くは、「指示」に応じて「動作」をするように教えるところばかりで、飼い主との生活場面に即した対処方法を教えてくれません。
飼い主がほんとうに求めている犬の心身の発達に応じた対処方法を飼い主が身につけるトレーニングは、出張トレーニングを行っている一部のトレーナーさんたちが行っていますので、ぜひ探してみてください。
千葉では、各地の県立公園でNPO法人PALの「愛犬との暮らし方教室」が、思春期の犬に対応した犬のしつけ方を教えています。
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Suzyに聞きたい! 犬のしつけ情報を探してインターネットをしていてこのサイトにたどり着き、いろいろな記事を読んでみて、もっと知りたいと思うことがあったかもしれません。そんなときは、LINEお友達登録のうえ、チャットでご質問をお送りください。 質問受付中 誰かが知りたいと思っていること...