犬のバベシア症とは
犬の「バベシア症」とは赤血球内にバベシア原虫が寄生して貧血などの症状を引き起こす病気です。
原因はマダニによる吸血
バベシア原虫を保有するマダニが犬を吸血するとバベシア原虫が36~48時間ほどで犬の体内に移動していき血液中に寄生します。
血液を媒介する寄生虫という意味ではフィラリアとよく似ています。
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ただし、バベシア原虫は血液中の赤血球を破壊するためフィラリアとは異なる症状を引き起こします。
直接マダニに噛まれなくてもバベシアに感染している母犬から胎盤感染によって子犬が感染することも少なくありません。
2種類いるバベシア
世界中には犬に寄生する複数種のバベシアが存在しますが日本国内では以下の2種が確認されているようです。
- バベシア・ギブソニー(Babesia gibsoni)…「トゲチマダニ」や「ヤマトマダニ」が保有
- バベシア・カニス(B. canis)…「クリイロコイタマダニ」が保有
病原性が高い「バベシア・ギブソニー」
バベシアのなかでもとくにバベシア・ギブソニーが病原性の強いバベシアです。
バベシア・ギブソニーは西日本(とくに山口県・香川県)を中心に広く感染が認められており致死率が高いことで知られています。
沖縄のバベシア・カニスも拡大中
クリイロコイタマダニが媒介するバベシア・カニスはこれまで日本国内では沖縄にしかみられませんでした。
しかし、近年では九州・中国エリアでもみつかっているようです。
全国で発症しているバベシア
原虫の種類はさておきバベシア症は関東や東北、北海道でも発生しておりバベシア症は西日本に住んでいる犬と飼い主だけの問題ではありません。
バベシア症の症状
血液中にバベシア原虫が寄生した犬に現れる症状には以下のようなものがあります。
- 溶血性貧血(歯茎や舌が白っぽい)
- 血小板減少(皮膚の点状出血、血便や血尿、鼻血のほか血が止まりにくいなど)
- 発熱(犬の平熱はおよそ38度台)
- 脾臓などの臓器の腫脹
- 黄疸(皮膚や眼が黄色くなる)
- 糸球体腎炎(多飲多尿、体重減少、タンパク尿、浮腫や腹水など)
- 食欲不振
- 衰弱
バベシア症の診断
上記のような症状をみせている犬にバベシア症が疑われるばあいは以下のような検査をして診断をつけることになります。
血液検査
バベシア症は免疫性の溶血性貧血とも症状が類似しているためそれらとの鑑別が必要になります。
最初に一般的な血液検査で貧血や血小板減少の程度、内臓の異常などを調べて「溶血性貧血」の有無を確認します。
「溶血性貧血」が疑われる場合は「免疫介在性溶血性貧血:IMHA」を診断するクームステスト(抗グロブリン試験)やバベシア感染を調べる遺伝子検査(PCR法)を行います。
また、採決した血液を顕微鏡で見て原虫の有無も確認します。
レントゲン、エコー検査
血液検査以外には臓器が腫れていないかどうかを確認したり溶血性貧血を起こす可能性のあるほかの疾患(腫瘍など)の有無を確認するためにレントゲンやエコーを使った検査もします。
バベシア症の治療と予後
今のところ一度バベシア症にかかってしまうと体内に寄生しているバベシア原虫を完全に駆除することは難しいとされ慢性感染を起こした状態をキープすることになります。
発症した場合は症状に合わせて薬を選択して治療をします。
しかし、いったん症状が治まったとしても完治したわけではなく体調によって再発を繰り返すことになります。
このため、発症するたびに治療をしたり長期的な投薬が必要となることもあります。
治療では抗生物質を投与することが多く薬剤耐性ができてしまうと治療が難しくなることもあります。
バベシア症の保護犬を迎える
バベシア感染している犬を家庭に迎えるときは強い症状を発していないという小康状態(慢性感染)にあることになります。
再発の可能性はゼロではない
ほかの疾患の治療のためにステロイド薬を投与したり、ほかの病気にかかるなどして一時的に免疫力が下がったりすると家庭に迎えた後にも貧血などの症状を起こすことがあるかもしれません。
免疫力を高める身体づくり
直接的な治療方法が存在しないので質の良い食事や散歩などの運動で身体づくりをして免疫力を高め発症させないように努めることが大切になってきます。
治療をどこまでやるか
発症したときにどこまでの医療を施すかは飼い主の「死生観」によって異なるもので一概には言えません。
ほとんどの飼い主は犬のための時間やお金を無限にもっているわけではないのが現実です。
「自分がしてあげられること」を「悔いなく」すればそれで良いのだと思います。
高度な医療(=高価な治療)をしてあげられなければ飼い主失格ということではないと思います。
バベシアだけが病気じゃない
バベシアを体内に持っていても長生きする犬もいます。
バベシア症でなくともほかの病気で突然命を失う犬もたくさんいます。
飼い主の不注意による不慮の事故(ノーリードや脱走・迷子)で若くして命を落とす子もいます。
予め「バベシアを持っている」と分かっていれば若いうちから元気に長生きするための対策もすることができるのではないでしょうか。
まとめ:バベシア症にならないために
バベシア症には治療薬がありません。
今のところ、いったん体内に寄生したバベシア原虫を完全に駆除することも出来ません。
バベシアを起因として現われる症状(おもに貧血)に対しては対症療法をしてあげることしかできません。
フィラリア同様に「万全な予防」を
バベシアに対する対策は狂犬病やフィラリアと同じように「予防」しかないのです。
飼い主は愛犬の命と健康を守るためにバベシア感染の予防対策が必須となります。
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外部寄生虫に対応した「フィラリア予防薬」を選ぶ
バベシア症を媒介するマダニに対しては飲み薬や滴下タイプの予防薬があります。
マダニの駆虫薬はオールインワンタイプのフィラリア予防薬のなかに含まれています。
外部寄生虫(ノミ・マダニ)の駆除に対応したオールインワンタイプのフィラリア予防薬を投与すると1つの薬でまとめて予防することができます。
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単剤を使っているならマダニ駆除薬の追加を忘れずに
外部寄生虫の駆虫に対応していないフィラリア予防薬を使っているばあいは、忘れずにマダニとノミを駆虫するための薬も投与することでバベシア症の感染を防ぐことができます。
こまめなブラッシングやマッサージも有効
日々、愛犬の皮膚や被毛の状態をチェックしていると目視でマダニを見つけて早期に駆除することもできます。
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