Turning the Back
- 相手を落ち着かせるためにとてもよく使われる
- 相手を嫌がっている行動ではない
はじめに:犬の「言葉」に耳を傾けよう
犬たちはヒトの言葉を話すことはできませんが、表情や姿勢、動きといった「ボディランゲージ」を通じて、自分の気持ちや意図を周囲に伝えています。
とくに「カーミングシグナル」と呼ばれる行動は、犬がストレスを感じたときに自分や相手を落ち着かせるための“平和のサイン”として行われるものです。
その中でも「背中を向ける」という行動は、非常によく使われる代表的なカーミングシグナルの一つです。
この記事ではその意味と具体的な使用シーン、飼い主としてどのように対応すればよいのかを詳しく解説していきます。
カーミング・シグナルとは
カーミングシグナルとは、ノルウェーのドッグトレーナー・トゥーリッド・ルガース氏が提唱した概念で、犬たちが自分自身や他者の緊張を和らげるために用いる自然なボディランゲージです。
カーミングシグナルは犬社会において、争いを避け平和的に共存するための重要なコミュニケーション手段として機能しています。
「背中を向ける」の意味
- 平和的な意思表示
- 自分を落ち着かせるため
- 信頼の証でもある
1)平和的な意思表示
犬が誰かに背を向けるとき、それは「私は攻撃の意図がありません」「あなたに害を加えるつもりはありません」という強いメッセージです。
相手との関係を平和に保ちたいという願いが込められています。
2)自分を落ち着かせるため
この行動は相手に対するシグナルであると同時に、自分自身の緊張や不安をやわらげるためにも使われます。
とくに恐怖や不快を感じたとき、犬はあえて視界から対象を外すことで、心の平穏を取り戻そうとします。
3)信頼の証でもある
また、背中を向けるのは信頼の証でもあります。
野生動物にとって、背を見せることは隙を見せる行動。
つまり、「あなたには背中を預けられる」と思っているからこそ、リラックスして背を向けるのです。
どんなときに「背中を向ける」のか?
- 犬同士の挨拶や対面時:緊張のある場面で、背中を向けることで衝突を回避。
- 飼い主の感情を察したとき:怒っていたり不機嫌な飼い主に対して、距離を取る。
- ストレスを感じたとき:騒音や不安な環境に対して背を向け、自己防衛。
- 遊びの中でのクールダウン:興奮しすぎたときに、落ち着くために背を向ける。
しつけや社会化との関係
「背中を向ける」というシグナルは、犬自身が争いを避けるために身に着けるべき「犬の言葉」です。
しかし、これを無視されたり叱られたりすると、犬はカーミングシグナルを出すことをやめてしまうことがあります。
これは非常に危険で、最終的には「噛むしかない」と思い込んでしまうケースもあります。
逆に、子犬のころからこのサインを尊重してもらった犬は、自分の感情を上手にコントロールする術を身につけやすいと言えます。
これは、飼い主と犬の健全な関係性にもつながります。
まとめ:犬の「背中」から信頼を読み取ろう
「背中を向ける」という行動は犬が対立を避けたいときに使う重要なカーミングシグナルです。
飼い主はこれをしっかり理解し、
- 無理に関与しない
- 穏やかに接する
- 環境を整える
- 背を向けて返す
といった対応をすることで、愛犬にとって「安心できる存在」となれます。
そして何より、犬が安心して背中を見せてくれるということは、「信頼の証」であるということを忘れないでください。
犬の声なき声に耳を傾けることが、より深い絆を築く第一歩となるのです。
【一覧表】カーミングシグナル全30種
犬たちのボディランゲージのなかにカーミングシグナルに該当するしぐさは30種類あると言われます。
愛犬がよく見せる行動や、お散歩中に見かけて意味を知りたかった行動をクリックしてゼヒ読んでくださいね。
犬の「本当の気持ち」が分かるようになると愛犬との暮らしがもっと楽しくなりますよ!
- 【完全版】カーミング・シグナルをおぼえよう!
- ゆっくりと歩く(Walking slowly):カーミング・シグナル(1)
- 身体を横に反らす(Turning the side):カーミング・シグナル(2)
- カーブを描きながら近づく(Walking in a curve):カーミング・シグナル(3)
- 横を見る(See the side):カーミング・シグナル(4)
- 尻尾を振る(Wagging tail):カーミング・シグナル(5)
- 座る(Sitting down):カーミングシグナル(6)
- どこかに行ってしまう(Go away):カーミング・シグナル(7)
- 前足を上げる(Lifting ones paws):カーミングシグナル(8)
- 鼻を持ち上げる(Nose up):カーミングシグナル(9)
- 2頭のあいだを裂く(Going between, splitting up):カーミング・シグナル(10)
- あくびをする(Yawning):カーミングシグナル(11)
- 身体を振る(Shaking off):カーミングシグナル(12)
- 身体を低い位置に落とす(Lower the body):カーミングシグナル(13)
- 遊びの誘い(Going down in play position/ Play Bow):カーミングシグナル(14)
- 子犬のように振る舞う(Like a puppy):カーミングシグナル(15)
- そっぽを向く・頭を動かす(Turning the head):カーミングシグナル(16)
- 口元を後ろへ引く (Lengthen the corner):カーミング・シグナル(17)
- 歯をカチカチと鳴らす(Tang the teeth):カーミング・シグナル(18)
- 口と鼻の周りをなめる(Licking nose):カーミング・シグナル(19)
- 口をパクパクさせる(Gasp the mouth):カーミング・シグナル(20)
- 背中を向ける(Turning the back):カーミング・シグナル(21)
- おしっこをする(Peeing):カーミング・シグナル(22)
- その場所にいないように振る舞う(Acting like nothing happen):カーミング・シグナル(23)
- 静止(Freeze):カーミング・シグナル(24)
- 地面の臭いを嗅ぐ(Sniffing the ground):カーミング・シグナル(25)
- 伏せる(Lying down like the Sphinx):カーミング・シグナル(26)
- 顔の向きを変える(Turn the face around):カーミングシグナル(27)
- 目をそらす(Gaze Aversion):カーミングシグナル(28)
- 笑う(Smiling):カーミングシグナル(29)
- 転移行動(Re-directional behavior):カーミング・シグナル(30)
あなたにピッタリの情報かも?
犬との暮らしについてもっと知識を得たいとき、もっと知りたいことがあるとき、本を読むことも大切です。 ドッグトレーナーが必読を勧める2冊 Suzyが絶対に読んでほしい本は以下の2冊です。発行年は古いものもありますが、内容はまったく古くありません。「犬のしつけ」の名著です。 1冊目...
犬たちには「犬のことば」があるということはすでにご存じかと思いますが、ここで改めて犬たちのことば「犬語」についてまとめてみたいと思います。 犬の言葉は世界共通! 私たち人間の世界では国によって使う言語が異なり、ほかの国へ行くと翻訳ツールがなければさっぱり言葉が通じません。それどころかこん...
犬たちは自分の感情や意思を表すため犬に対しても人に対しても、さまざまなボディランゲージ(含むカーミング・シグナル)を用いて犬ならではのコミュニケーションをしています。身体の複数のパーツを同時に使い、その組み合わせによって複雑な感情を表現しています。また、その感情は瞬時に刻々と変化して...
犬たちは日本語を話しませんが、犬のことばをもっています。犬とともに暮らす人は、犬のことばを学びましょう。犬の気もちを読み取るスキルを身に付けさえすれば、心のボタンを掛け違えることはなくなります。そして、飼い主か愛犬のどちらか一方だけがガマンを強いられることのない、イヌ・ヒトの...
PALのレッスン等で飼い主さんに配布している『犬語』のリーフレットは、ニューヨーク在住のイラストレーターLili Chinさんが無償配布している「犬のボディランゲージ」のイラストです。『犬語図鑑:犬のボディランゲージを学んでもっと愛犬と仲良くなろう』 これをより詳しく掘り下げた本が、日...
SuzyにLINEで質問!
この記事を読んでもっと知りたいことや疑問が沸いてきたら、以下のページからLINEのお友達登録のうえチャットでSuzyにご質問ください。
犬のしつけ情報を探し、ネットサーフィンをして、このサイトにたどり着き、いろいろな記事を読んでみて、もっと知りたいと思うことがあったかもしれません。そんなときは、LINEお友達登録のうえ、ぜひチャットでご質問をお送りください。 質問受付中! あなたが「知りた...
:犬のカーミング・シグナル(21).png)



