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犬のカーミング・シグナル(24)犬の「静止」は確認のサイン――相手の心を読む“止まる力”

静止(Freeze)

  • 犬と会ったときにするのは「1. ゆっくり歩く」と同じ意味を持ち相手にシグナルが通じているかを判断している行為
使用頻度★★★★★

はじめに:「フリーズ」は無言の問いかけ

犬が突然ピタッと動きを止める。まるで時間が止まったかのように見えるこの「静止」(Freeze)の行動には、深い意味が隠されています。

「何かに怯えているのかしら?」「何かを狙っているのかしら?」と飼い主に誤解されることもあるこの行動ですが、じつは多くの場合、犬は“相手と自分の距離感”や“場の空気”を探っている状態です。

「静止」(Freeze)は、繊細なコミュニケーションである「カーミングシグナル」の一種なのです。

カーミングシグナルとは?

犬は言葉ではなく、身体を使ったサインで自分の感情や意図を伝えています。

なかでも「カーミングシグナル」(calming signals)とは、自分や相手の緊張を和らげるための“平和のサイン”として知られています。

ノルウェーのドッグトレーナーであるトゥーリッド・ルガース氏によって提唱されたこの概念には、27〜30種類の犬の行動が挙げられており、「静止」もその一つに含みます。

カーミングシグナルとしての「静止」とは?

カーミングシグナルとは、犬が相手との対立や緊張を回避するために使う非言語的なメッセージです。

そのなかで「静止」(Freeze)は“自分から動かないことで、場を鎮める”という高等な手段。

これは「私は何もしないよ」という意思表示であり、相手に対して過度な刺激を与えずに相手の様子をうかがう、犬らしい思慮深さの表れでもあります。

また、これは「ゆっくり歩く」カーミングシグナルと対になっていることも多く、相手の出方や反応を冷静に判断するための“間”として使われます。

「静止」が使われる具体的なシーン

以下に、カーミングシグナルとして犬が「静止」することが多い場面を具体的に挙げます。

つぶやきただし、以下の状況であるからと言ってすべての「静止」がカーミングシグナルであるとは思わないことです。さまざまな条件を勘案して判断をすることが必要です

シーン1:他の犬と出会った瞬間

たとえば、お散歩中に角を曲がったとき向こうから犬が歩いてくるのに気づいた瞬間、あなたの愛犬が急にピタッと立ち止まった経験があるのではないでしょうか?

これは、相手の犬がどう出てくるかを観察するために示されるカーミングシグナルとしての「静止」であることが多いでしょう。

この間に「相手はこちらに気づいているか?」「敵意はあるか?」「自分の静止に反応してくるか?」といった情報を読み取ろうとしています。

相手との距離を測る高度な社会的行動です。

ただし、この状況は小競り合いで決着がつかずに喧嘩に発展することがあります。

このため、飼い主が母犬に代わって愛犬に「犬社会の礼儀正しい挨拶」をさせてやる必要があります。

シーン2:興奮の高まりを自分で抑えているとき

ボールを追いかけて興奮した後、犬が急に動きを止めることがあります。

これも「今、自分は落ち着く必要がある」と自制しているサイン。

犬はこうして自ら感情のコントロールを試みることもあるのです。

これは思春期以降の犬たちに見られるもので、脳の発達がまだ未熟なパピーには難しい行動でもあります。

つぶやき自制心を養うしつけは生後6カ月前後からスタートさせると効果的です

シーン3:叱られたときや緊張した場面

飼い主の語調が少し強くなっただけで飼い主の気持ちの変化を察してフリーズする犬もいます。

動かないことで場の緊張を和らげようとするこの反応は叱られて「萎縮」したのではなく“空気を読むための一時停止”です。

愛犬が静止したときの接し方

お散歩中に愛犬が突然立ち止まり動かなくなったとき、飼い主は「イラッ」とすることもあるでしょう。

しかし、心を乱す前にしなければならないことがあります。

犬の目線を観察する

どこを見ているか、身体はどちらに向いているか、耳や尾の状態などから、何に対して警戒して「静止」しているのかを読み取ります。

無理に動かそうとしない

すぐにその場から立ち去らなければならない場合をのぞき、すぐにリードを引いて動かすと愛犬は不安になってしまいます。愛犬は今、「周囲を読もうとしている」最中です。

緊張を助長しない

飼い主が不安そうな表情や声を出すと、犬も「これはまずい状況だ」と感じてしまいます。

飼い主は愛犬をリラックスさせる働きかけをする必要があります。

具体的には、別のカーミングシグナルをの姿勢をとらせることです。

この場面で飼い主が誘導して使わせることができる主なカーミングシグナルには以下のようなものが挙げられます。

  • 座る
  • 背中を向ける
  • 顔の向きを変える

静止している他犬への対応方法

お散歩中やドッグランなどで、ピタッと動かなくなった他犬に遭遇したら、油断せず観察することが必要です。

状況の観察を優先する

「静止している=おとなしい」とは限りません。

呼吸の速さや目つき、毛並みなどを観察して、相手の犬が友好的に対応したいと考えているかどうかを探る必要があります。

つぶやきその前に、自分の犬が「友好的」にかかわるつもりでいるのかどうかを判断しなければなりません。こちらが友好的にふるまう気がないのであれば、相手の犬に愛犬を近づけてはいけません

相手のシグナルを尊重する

フリーズは「これ以上近づかないで」という合図かもしれません。

無理に接触させると緊張が爆発して攻撃されてしまうかもしれません。

愛犬にもカーミングシグナルを使わせる

フリーズしている相手犬にこちらの犬が突っ込んでいくとトラブルになる可能性が高いです。

もし、愛犬がフリーズしている犬にグイグイと近づいていこうとするならば、飼い主は愛犬にカーミングシグナルを出しながら近づくように誘導する必要があります。

飼い主が誘導することで使わせることができるカーミングシグナルの例

首輪とリードを使って誘導することで上記のカーミングシグナルを使わせることができるはずです。

「静止」はシグナルが通じるかを確認する間(ま)

「ゆっくり歩く」カーミングシグナルと同様、「静止」も“相手にこちらの意図が通じているのかどうかを探る”カーミングシグナルです。

とくに犬同士では、静止によってお互いに「いま、自分はどう振る舞えばいいか?」という読み合いが行われています。

このとき、相手が静止以外のたくさんのカーミングシグナルを発するようであれば、相手も友好的であると判断できます。

相手がじっとこちらを見つめてきたり、鼻先にシワを寄せていたり、背中の毛が逆立っているようであれば、距離を取るべきだということです。

静止は、まさに“その場にいながら空気を読む”ための時間なのです。

まとめ:「動かない」という深い選択

犬の「静止」(Freeze)は単なる萎縮や恐怖の現れではありません。

それは、“相手と場を読むために、あえて動かない”という賢明な選択なのです。

このシグナルを理解できると、これまで気に留めることもなかった犬たちのささいな行動が意味を持って見えてきます。

犬は言葉ではなく動きで語る動物です。

だからこそ、私たち飼い主が「止まっているその理由」に気づけるようになることが、信頼関係を築く第一歩なのです。

カーミングシグナル全30種

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Shizuka “Suzy” Ishida

2005年より東洋思想をベースにした「ごほうびにオヤツを使わない犬のしつけ方」を提唱。吠える・噛むの問題を抱えた小型犬のしつけを得意としていますが、保護犬の心のリハビリもしています。当サイトで提示しているしつけ方法はすべての犬に100%当てはまるものではありません。性格や状況によって対処方法はさまざまです。お試しになる際はあらかじめご理解のうえお願いいたします。

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