2019(令和元)年6月に公布された「改正・動物の愛護及び管理に関する法律」(動物愛護管理法)により、2022年(令和4年)6月1日以降ブリーダーやペットショップ等で販売される犬や猫には譲り渡し前のマイクロチップの装着が法律で義務化されました。
マイクロチップとは
15桁のバーコード情報の入ったチップのことです。
このチップをペットの体内に埋め込み迷子対策として活用するものです。
なぜマイクロチップが義務化された?
東日本大震災の教訓として
東日本大震災(2011年)当時、福島をはじめとする東北地方では「首輪(迷子札)を着けていない」「避妊去勢をしていない」犬たちがたくさん飼われていました。
これらの犬たちが飼い主とともに避難できなかったことで多くの飼い主不明犬が発生しました。
保護することができなかった犬たちは野犬化し、たくさんの野犬の群れが生まれました。
当時、保護することができた犬たちの多くは寿命を迎える時期となりましたが、野犬化した犬たちは代々繁殖を繰り返し、今も多くの野犬の群れが存在しています。
故意によるペットの遺棄を防ぐため
いちど体内に入れてしまえばマイクロチップは飼い主が外すことはできません。
故意にペットを捨てたとしても、マイクロチップの情報から必ず足がつきます。
このため、安易な飼育(と放棄)の歯止めにも一役買うことが望まれています。
マイクロチップが選ばれた理由
犬猫の販売時に個体に装着して渡すことが義務となった「マイクロチップ」のほか、犬が飼い主とはぐれてしまった場合に備えとしてはほかに、
- 迷子札または犬鑑札
- タトゥー(刺青)
があります。
しかしながら、これらの迷子対策には以下のようなデメリットがあります。
迷子札(犬鑑札を含む)の弱点
首輪に取り付けたりネックレスのように首にかけておくことが多い「迷子札」には以下のような弱点があります。
落とす・失くす
首輪に付けていたものを気づかないうちに落としてしまうことがあります。
また、首輪そのものが外れてしまうこともあります。
読めなくなる
ペンで書いたものや印刷したものは日々使っているうちに摩耗したり汚れたりして、書いてある文字が読み取れなくなることがあります。
タトゥー(刺青)の弱点
タトゥーはジャパンケネルクラブ(JKC)や警察犬協会等の血統書の発行団体による管理の下に行われます。
血統書作成時に子犬の右耳の内側もしくは腹部に番号を刻印します。
タトゥーはマイクロチップの普及する以前から、個体識別情報を身体に直接記録して血統書のすり替えが起こらないようにするために行なわれてきました。
機会は血統書作成時に限られる
タトゥーは血統書に記載する個体識別番号です。
このため、ブリーダーが血統書を申請する際に実施する以外に個体識別のためのタトゥーを施す機会はないと考えられます。
読めなくなる(薄くなる・ゆがむ・隠れる)
また、子犬時代に入れたタトゥーは体の成長に伴って刻印のカタチが歪んだり、色素が薄くなったり、施術箇所に毛が生えてきたりして判読しづらくなるというデメリットがあります。
国際的に採用されているマイクロチップ
迷子札やタトゥーのデメリットとして挙げた弱点はマイクロチップにはありません。
このような理由から、輸出入や引っ越し等で海外と行き来するすべての犬にはマイクロチップの装着が義務付けられています。
迷子札やタトゥーにはない利点があるため法律で義務化する迷子対策として「マイクロチップ」が採用されました。
マイクロチップは迷子札やタトゥーのデメリットを補完できる迷子対策です。
マイクロチップにも弱点がある
画期的な迷子対策である「マイクロチップ」ですが弱点もあります。
外から見ても分からない
外から見たり触ったりしてもその動物がマイクロチップを装着しているかどうかは分かりません。
体内にチップがあるかどうかを確認するには専用の機器が必要となります。
自治体に照会を依頼しないといけない
また、読み取り機で得られるのは15桁のバーコード情報のみです。
個人情報保護の観点から15桁のバーコードにヒモづく飼い主情報を取得できるのは自治体と警察のみとなります。
このため、誰かが迷子の犬を見つけて動物病院に連れて行っても、チップに埋め込まれたバーコード情報を読み取ることしかできません。
チップの番号に紐づいた飼い主情報の確認は行政機関に依頼する必要があります。
行政機関の対応は開庁日・時間帯に限られてしまいます。
このため、飼い主に連絡をとれるようになるまでに時間がかかります。
「AIPO」にも追加登録
少しでも早く連絡がつくようにしたいと思う飼い主さんは、環境省以外にも日本獣医師会の「AIPO」(マイクロチップ登録事業)に追加登録をしておきましょう。
追加で登録料が1000円ほどかかりますが「AIPO」に登録しておけば、動物病院でもマイクロチップの番号に紐づく飼い主の情報を得ることが可能になります。
動物病院から飼い主へという連絡ルートも生まれ飼い主への連絡が早まる可能性があります。
マイクロチップの活用が浸透していない
義務化されてから日が浅いこともあり、犬や猫を飼っている人やペット業界に関わりのない分野ではその存在をあまり知られていません。
このため、本来であれば飼い主情報を取得するべき状況で活用されていない現状もあります。
身元確認が行われない死んだペット
車に轢かれたり電車にはねられたりして命を落としたペット(犬や猫)のマイクロチップの有無を確認するということは、2024年時点で積極的になされていないようです。
とくに鉄道会社においては轢死した動物の処理のおいて「ペットかどうか」「持ち主を探す」という概念が抜け落ちていることが指摘されています。
飼い主はたとえ命を失っていたとしてもペットの所在を確認したいはずです。
そうでなければ、いつまでもずっと探し続けることになってしまいます。
「死んでいる」ばあいは飼い主特定をしない(マイクロチップの有無を確認しない)というのは、飼い主の目線から見ると残念で仕方ありません。
愛犬(猫も)の生き死にが確認できるまで飼い主はずっと探し続けます。
そもそも迷子にしないことが重要なのはいうまでもありませんが、多くの飼い主が声を上げ訴えていく必要がありそうです。
マイクロチップ登録の流れ
愛犬にマイクロチップを入れようと思ったら、動物病院で挿入します。
しかし、挿入後の手続きは自分(または行政書士)がやらなければなりません。
環境省のホームページで、犬や猫の所有者のマイクロチップ装着・情報登録の流れについて分かりやすく図解で紹介をしています。
より具体的な手続き方法については以下のサイトをご覧ください。
まとめ
マイクロチップ自体は20年以上前から動物の個体識別に使われていますが、法律で挿入が義務化されたのはつい最近のことです。
このため、本当であれば使える場面において活用しきれていないのが現状です。
(なんか、マイナンバーカードと似ていますが)
今は迷子対策として飼い主の識別用にしか使われていませんが、今後、民間を含めより便利な活用法が模索されています。
愛犬にかかわるさまざまな手続きが便利なることを期待したいところです。
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