ペットショップの店頭で子犬を購入する飼い主たち(消費者)は、自分の家族の一員にしようと思って購入していますが、店頭で販売されている犬たちは、そもそも「産業動物(経済動物)」であるということを頭に入れておかなければいけません。
産業動物の対義語は「野生動物」です。
人間社会の存在に依存していない動物や、本来自然界に於いて生息するのが自然な状態である動物のことで、人間に改良された品種としての飼育動物(犬)は「野生動物」ではありません。
人里はなれた山中で、人と一切の関わりをもたずに生きている野犬については、判断が微妙なところです。
しつけ相談に来られる飼い主さんのなかには「自然のままがいい」と言って、マイクロチップや避妊去勢手術を拒む方も少なからずいらっしゃいます(ほぼ男性…)が、あなたの犬は「そもそも自然が生み出したものではない」ということを理解しておいてほしいと思い、この投稿を書くことにしました。
産業動物(経済動物)とは?
飼養者の経済行為として飼育が行われる動物のことを言います。
乳牛や家畜(牛・豚)などをイメージしがちですが、店頭に流通しているペットたちも立派な産業動物です。
ヒトの口に入る産業動物については、生産者も行政も消費者にわたった後の影響を考えて、厳しい規制を設けて管理し、それらを遵守していますが、ペットの生産に関してはヒトへの健康被害について考慮する必要性が薄いため、経済効率を最優先した生産が行われていることを、大金をはたいて購入する前に知っておく必要があると考えます。
生産者:商業繁殖施設(生まれた子犬をペットショップに卸すブリーダー)
- 同じ室内で、何十、何百という犬が狭いケージの中のみで生活
- 繁殖犬の遺伝病について下調べしない(一部企業では実施しています)
- 年に複数回の出産を強いられ、体力が回復する間もない
- 病気や怪我をした場合の医療処置もほぼ最低限
このような状態の親犬から生まれた子犬たちは、
- 不衛生な環境で不健康な母体から生まれたため健康状態も良くないことが多い
- 健康状態同様に精神状態も不安定な犬が少なくない
- ごく幼いうちに流通ルートに乗って、生活環境がめまぐるしく変化するため、心の成長の機会がない
こうした犬たちが、1つのかごに何匹も団子になって入った状態で貨物として陸送または空輸され、生産者のもとから卸業者へ渡り、オークションにかけられたのち、全国に流通しているのです。
一口にブリーダーと言っても、飼い主に手元にわたった後のことまで考えて繁殖にたずさわるブリーダーもいると思います。
ですが、こうしたブリーダーの生産する犬は、ペットショップでは手に入りません。
不健康な犬を飼うとどうなるのか?
店頭で「抱っこしてみませんか?」と言われて、自分の腕のなかにいる目の前の子犬の可愛さに理性も吹き飛び「この子にします!」と言ってしまいそうになるかもしれませんが、この先のことにも思いを巡らせてみます。
膨大な医療費がかかる
これは、「1.不衛生な環境と不健康な母体から生まれたため健康状態も良くないことが多い」と関連しますが、ペットショップからきた時点で、耳ダニや内部寄生虫がいることもよくあります。
あまりにもありすぎて、販売側は病気の範疇として考えていないかもしれません。
このため、購入時にはペット保険への加入を強く勧められます。
また、これ以降も「肌が弱い」「お腹が弱い」「アレルギー」などの不調を抱え続けたり、遺伝病を発症するなどして大きな手術や入院が必要になるなど、生涯にわたって通院が必要になってきます。
動物の医療には、人間同様の健康保険の制度はありません。
「ペット保険」として損害保険会社から治療費補助の保険が販売されていますが、人間の制度と比べると頼りないものとなります。
人間の医療明細の、自己負担分だけでなく、全額の金額を見てみてください。犬については、これらのすべてが自費になるのです。
動物にかかわる国家資格は「獣医師」のみで、今後「動物看護師」についても国家資格化が予定されていますが、いずれも「動物が病気にかかってくれて生計が成り立つ」商売です。
動物やその家族のことを考える獣医師ももちろんいると思いますが、「病気にかかる動物がいないと困る」立場の人たちでもあります。
このため、ペット産業において生産されるペットたちの健全性について獣医師たちの大半がノーコメントなのです。
ケアに時間がとられる
医療にかかるということは、投薬やお手入れ、食事の工夫なども併せて必要になります。
病気によっては投薬の時間が決まっていることもありますし、自力で食事ととれない場合は食べさせてあげる必要もあります。
家を空けられない・目を離せない状況が起こることもあります。
意思疎通がむずかしい
これは、「2.健康状態同様に精神状態も不安定な犬が少なくない」「3.ごく幼いうちに流通ルートに乗って、生活環境がめまぐるしく変化するため、心の成長の機会がない」に関係してきますが、精神的に安定した犬であれば、医療ケアなど必要な処置も、しつけを通じて意思疎通がはかれるようになってくれば、問題なく受け入れることができるようになります。
しかし、精神的にも犬らしさを失い、犬としての経験不足から、犬とも人間ともなかなかうまく関わることが難しい犬たちがいることも事実です。
「心が通う関係」をもとめて犬を購入したにもかかわらず、犬との生活がつらく負担に感じ始めます。
ここで、教育にお金を投資して、できるだけ短期に困りごとを解決しておくか、それとも、飼い主も犬も双方がストレスを抱えながら生涯を全うするかで、犬との暮らしの質が変わってきます。
こうしたケースでは、集団のしつけ教室に入る前に、個別指導を受けるほうが、より効果的に成果を感じられます。
理由は、集合のレッスンは「最大公約数」的な一般的な理論に基づいて行われるため、いくら教室に通っても、あなたの犬に響く内容になっていないからです。
まずは、犬としてのものの考え方や習性・行動をしっかりととれるように、飼い主が母犬に代わって教えてあげる必要があるのですが、飼い主さんが母犬になるための勉強をしてから、みんなの輪に加わっていくことになります。
日本では、まだまだペットの教育にお金をかけるという意識が少ないですが、飼い主も犬も、愛犬の一生のあいだ「どのような気持ちで過ごすか」という質の問題に対して、もっと意識を向けるべきだと考えます。
目に見える遺伝病のような疾患に対しては、すこし意識が向いてきているかもしれませんが、精神面の健全性も「暮らしの質」を左右する大きな問題であることに変わりありません。
消費者である未来の飼い主にできること
上記に挙げた、「不健康な犬を飼うとどうなるのか?」という問題は、ペットショップで購入した子犬に限らず、どんな生き物にでも起こりうることでもあります。
もし、あなたの迎えた愛犬が病気になってしまったり、生活のなかで関係がうまくいかないときは、飼い主として出来る限り解決に取り組む責任があります。
しかし、生産者が「わざわざリスクの高い犬を繁殖している」というのは、消費者に対して不誠実ではないかと思うのです。
賢い消費者になろう
経済の理論で考えれば、「買う人がいるから作る人が生まれる」のであって、消費者に買ってもらえない商品しか生産できない生産者は淘汰されます。
動物の福祉や飼い主のその後の生活について考えることもなく、経済合理性のみを基準に繁殖や販売が行われているペットを購入しないことでしか変えることはできません。
これまで犬と関わりのない方が犬を飼いたいと思っても、犬(にかんする情報)との接点がペットショップだけになってしまいがちですが、インターネット上でもさまざまな情報を入手できる時代です。
いったん犬を迎えたら、その後少なくとも15年はあなたの生活に大きな影響を与えます。
ぜひ、さまざまな情報に触れて、愛犬選びをしてほしいと願います。
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