「何を準備すればいいか知りたい」
ペットショップやブリーダーからであろうと、保護団体からであろうと、犬を迎えるということは「1匹の命に、最後まで責任をもつ」ことです。
ドッグトレーナーとして20年以上、数えきれないほどの飼い主さんと犬たちの現場を見てきた経験から、「犬を飼う前にこれだけは確認してほしい」という条件を17項目にまとめました。
厳しいことも正直に書きます。
でも、それは犬のためだけではなく、飼い主さんのためでもあります。
1. ペット可の住宅に住んでいる
マンションや賃貸物件の場合は、管理規約で犬の飼育が明確に認められていることが大前提です。
「黙認されている」「たぶん大丈夫」では困ります。


完全室内飼育が基本
屋外の犬小屋飼育や、玄関・廊下への放置は不可です。
犬の居場所(サークルやクレート)は、家族が集まるリビングに設置するのが基本です。
犬は「家族の一員」として迎える生き物です。物置や倉庫のように扱うことは、虐待と変わりません。

例外的なケース
柴犬などの日本犬や、長く野犬として放浪生活をしていた犬のなかには、人との距離感を自ら保とうとする気質をもつ子もいます。
その場合は、無理にリビングに居場所を設ける必要はありません。
温度管理された屋内で、犬が落ち着ける場所を選ばせてあげましょう。
玄関先や廊下(洗面所や勝手口の近く等)などを好むケースもあります。

2. 家族全員が賛成している
「私は飼いたいけど、夫(妻)はあまり乗り気じゃなくて…」というご家庭は少なくありません。
しかし、これは非常に危うい出発点です。
犬は人間の感情を読む天才
犬はヒトの気持ちを驚くほど敏感に読み取ります。
家族の中に一人でも「この犬が嫌いだ」「いなければよかった」と感じている人がいれば、犬は心を開くことが難しくなります。
その結果、愛犬がいつまでたっても家族に慣れなかったり、「自身が家族に受け入れられていない不安」を吠える・噛むといった問題行動として示すことも少なくありません。
同居する家族全員が、心から賛成していること。
これが犬との暮らしの出発点です。

3. 適切な健康管理ができる収入がある
犬を飼うのには、思っている以上にお金がかかります。
年間の費用の目安
毎年必要になる費用には、混合ワクチン、狂犬病予防接種、フィラリア予防薬、ノミ・ダニ予防薬のほか、良質なドッグフード、首輪やリードなどの犬具、トリミング(犬種によって)があります。
トリミング不要な小型犬であっても、年間30万円程度は犬のために使うものであると考えておいてください。

飼い始めがもっともお金がかかる
新しい環境に迎える際には、クレートやサークル、首輪、リード、トイレグッズなど一通りの用品を揃える必要があります。
せっかく買ったのに、使ってみたら「やっぱり合わなかった」というものもたくさん出てきます。
それも「必要経費」として受け入れられる余裕が必要です。

病気になれば桁が違う金額が飛んでいく
犬の医療費には、人間のような健康保険制度がありません。
大きな病気や手術になれば、数十万円の費用がかかることもあります。
ペット保険への加入も検討に値します。
4. 脱走対策に努められる
不意な出来事で脱走して迷子になる犬、交通事故で命を落とす犬が、今この瞬間も日本中で起きています。
絶対に逃がさない覚悟を
とくに、新しい家に来て間もない時期の犬は、新しい環境から逃げ出そうと隙を常に伺っています。
犬の飼育経験があっても油断は禁物です。
むしろ「経験者の慢心」が最も危険と言えるかもしれません。

最低限やるべき脱走対策
- 在宅中も迷子札(できればGPSトラッカーも)を装着する
- 散歩時は首輪抜け防止のためダブルリードを使用する
- 玄関前に飛び出し防止柵を設置する
「うちの子は逃げない」という過信が、命取りになります。

5. 留守番が長すぎない
週5日フルタイムで出社している共働き家庭の場合、犬の留守番時間は毎日9〜12時間になることがあります。
犬は「群れ」の生き物
猫と違い、犬は群れで行動する生き物です。
長時間を一人で過ごすことは本来の姿ではなく、慢性的な不安やストレスの原因になります。

対策があれば飼えるケースも
フルタイム勤務の家庭でも、以下のような対策をとることで飼育できる場合があります。
- 日中、近隣に住む家族に犬を預ける
- 犬の保育園(デイケア)に通わせる
- ペットシッターに留守中の散歩代行を依頼する
大切なのは「留守番が長い現実」を直視して、対策を考えられるかどうかです。
6. 毎日、十分な散歩の時間がとれる
散歩は「できたらやる」ではなく、飼い主の義務です。
散歩はなぜ必要か
散歩には運動だけでなく、心理的な満足(においを嗅ぐ、外の世界を感じる)、社会化、飼い主との信頼関係の構築といった複数の重要な役割があります。
この時間を毎日確保する余裕があるかどうか、考えてみましょう。
自分では時間が確保できない日が続きそうな場合は、ペットシッターへの散歩代行依頼も視野に入れてください。
犬も年をとります。一生、迎えたときと同じだけの時間と距離を散歩しなければいけないわけではありません。
成長のステージに応じて心身の健康に必要なお散歩をしてあげましょう。

必要な時間の目安
若くて健康な犬であれば、朝晩それぞれ30〜60分が目安です。
それも、犬種・年齢・体調・季節によって異なります。
子犬~2歳ぐらい
一生の間で、もっともエネルギーが有り余っている時期です。
有り余るエネルギーをお散歩(運動)でしっかりと発散しなければ、さまざまな問題行動に発展します。
吠える、壊す、引っ張るなどの問題行動の原因に運動量の不足が影響していることが多い時期です。
保護犬(成犬)
家族に迎えた愛犬と、心の通う関係を作るためには毎日の「お散歩」が欠かせません。
とくに、人とのかかわりが薄かった保護犬を迎える際は、とにかくたくさん一緒に歩いて行動を共にすることが、信頼関係の構築を加速させます。
家族に迎えてから1年くらいのあいだは、お散歩の回数と時間をしっかりと確保することが大切になります。
シニア
犬種や健康状態によって千差万別ですが、シニア期はお散歩で体力を発散するステージではなくなります。
だからといって、まったく散歩に行かなくて良い訳ではありません。
外の空気に触れたり、さまざまな匂いを嗅いで脳を刺激することは必要です。
7. しつけに前向きに取り組める
「迎えた日からすぐに家族になれる」と思っている方がいますが、それは幻想です。
犬と「言葉」は通じない
私たち人間は、生まれつき犬の考えや感情を本能的に理解できるわけではありません。
また、こちらの意思を「犬に分かる形」で伝えることも、最初はできません。
これは、当然のことです。
種の違う生き物と家族になろうとするならば、ヒトと「同じところ・違うところ」をしっかりと学ばなければいけません。
本やインターネット(YouTube含む)、しつけ教室で教わることができます。

学び続ける姿勢が大切
問題行動が起きたとき、そのまま放置せず「なぜそうなるのか」を理解し、改善しようとする姿勢があれば、必ず解決の道は開けます。
独学で抱え込まず、早いタイミングでプロに相談することが、じつは一番の近道です。

8. 家族構成が安定している
犬を迎えることに適していない家族構成があります。
正直に書きます。
1)妊娠中・乳幼児がいるご家庭
育児と犬のしつけを同時にきちんとやり遂げることは、物理的に非常に困難です。
また、乳幼児は身体の発達が未熟なため、犬アレルギーを後から発症するリスクもあります。
一番下のお子さんが10歳になってから犬を迎えることを強くお勧めします。
子どもが10歳を過ぎてから犬と暮らすことは、心理学的にも家族に多くの良い影響をもたらします。
ただし、最終的に犬の面倒をみるのは「親」であることを忘れないでください。

2)未婚のカップル
婚姻関係を結んでいないカップルは、既婚者と比べて関係を解消しやすい状況にあります。
飼育放棄犬の中には、未婚カップルが別れたことで行き場を失った子たちも少なくありません。
ライフスタイルが定まるまでは、生き物を迎えないことをお勧めします。
3)未成年
契約能力がないため、売買(譲渡)契約を結ぶことができません。
自分の生き方がある程度定まるまでは、ペットを迎えないことをお勧めします。
犬に関わりたい気持ちがあるのなら、保護団体でのシェルターボランティアという形で、多くの犬に貢献する道もあります。
9. 動物アレルギーへの備えがある
現時点で家族に重度の犬アレルギーがある場合は、犬との暮らしをあきらめるべきです。
「捨てるのは可哀そう」だからと考えて、手放すことはしなくても、家族にアレルギー症状がでないように犬を隔離して、エサだけ与えて「飼い殺し」にしているケースもあります。
犬は群れで生きる生き物です。エサだけを与えられて心の交流を持てない飼い方は、飼い主にとっても犬にとっても不幸でしかありません。
アレルギーは突然発症する
今、大丈夫でも、この先ずっと大丈夫とは限りません。
アレルギーは、ある日突然発症することがあります。
もし発症した場合にどうするかを、あらかじめ家族で話し合っておくことが重要です。
アレルギー治療は日々進歩しており、主治医と相談しながら共生の道を探ることが先決です。
犬を手放すのは、最終手段です。
10. 年齢的に最期まで面倒をみられる
獣医療の進歩によって、犬の寿命は15歳を超えることが珍しくなくなり、二十歳に手が届きそうな犬たちも増えています。
「自分が75歳になるまであと何年か」を基準に
一般的に75歳を超えると、何らかの疾患を抱えて犬の世話を責任をもって続けることが難しくなると言われています。
子犬や若い犬を迎えるなら、「20年後もこの犬の面倒をみられるか」を自問してください。
たとえば、現在65歳の方なら、8歳以上のシニア犬のお迎えを検討するのが現実的です。
若いころの体力と今の体力は違う
先代犬が若かったころと比べて、飼い主自身も確実に気力・体力が落ちています。
子犬を迎えることは「もう一度、人間の赤ちゃんを育てる」くらいの覚悟が必要です。
若いときにと同じ感覚で子犬を買ってきてしまい、持て余している飼い主さんからの相談をたくさん受けています。
どうして、買う前に考えなかったのか…。
売り渡す方に良心の呵責はないのか…。
毎回、悲しい気持ちになります。
11. 犬のために住環境を整えられる
どんなに犬好きの優しい家族でも、住環境が犬にとって危険なままでは安心して暮らせません。
玄関(エントランス)から犬が過ごす部屋、ベランダ(庭)まで安全確認を行い、必要に応じて柵の設置などに対応できる柔軟さが必要です。
これには、それなりにコストもかかります。
12. 初期費用・輸送費・医療費を負担できる
保護団体から保護犬を迎える場合であっても、犬を迎える前には輸送や健康診断、避妊手術などの費用が発生しています。
保護団体から迎える場合は「譲渡費用」として一定の金額が設定されていることが一般的です。
その金額の妥当性を理解したうえで、納得して支払える準備をしておきましょう。
13. 法律で定められた手続きができる
犬を迎えたら、以下の法的手続きが義務づけられています。
マイクロチップ登録
2022年以降、販売業者からの犬・猫にはマイクロチップの装着・登録が義務化されました。
このため、法令を遵守している販売業者や保護団体から犬を迎えていれば、あらかじめ体内にマイクロチップが埋め込まれています。
保護犬の場合も、犬の所有者が里親に変わった際には、登録情報の書き換えが必要です。

狂犬病予防接種
毎年1回の接種が法律で義務づけられています。
狂犬病予防接種を接種済みであることを示す「注射済票」を、常時犬の身につけておくことが飼い主の義務とされています。

畜犬登録
お住まいの市区町村の役所で登録し、「犬鑑札」を発行してもらいます。
犬鑑札を犬の身に常時装着しておくことが「狂犬病予防法第4条」により、飼い主に義務付けられているため、入手次第、愛犬の首輪につけておく必要があります。
なお、犬の所在地を管轄する市区町村が「狂犬病予防法の特例」制度に参加しているばあいは、市町村の窓口で直接、犬の登録申請を行う必要はなく、鑑札の支給もありません。
ただし、狂犬病予防接種の注射済票については、引き続き、市町村の窓口等で毎年交付を受ける必要があります。

14. 先住犬の管理が十分できている
すでに犬を飼っている場合、先住犬に対して適切な健康管理と避妊・去勢がなされていることが前提です。
犬が増えれば、お世話に必要な時間もお金も増えます。
また、先住の犬に問題があるとき、「2匹目を迎えれば直るのでは?」という安易な考えで多頭飼いを始める人も少なくありません。
後輩は先輩の姿を見て学びます。
先住犬にしつけ上の問題(チャイムに吠える、ほかの犬に吠えるなど)を抱えたまま次の犬を迎えても、悩みは倍になるだけです。
まずは、先住犬のしつけをしっかりと行うことが最優先事項です。
今の犬に十分向き合えていない状況で新たな命を迎えても、誰も幸せになりません。

15. 老犬介護まで想定している
犬はヒトの約5倍の速さで歳をとります。
あっという間にシニアになり、介護が必要になることがあります。
老犬の介護には、頻回の通院、投薬時間の管理、食事の介助、清潔保持などが必要になります。
そのための時間・体力・費用を用意できるか、あらかじめ考えておく必要があります。
老犬ホームという選択肢もありますが、ペットには介護保険がないため、多額の費用がかかります。
16. 万が一のときの「次の手」を考えている
自分が病気になったら。仕事で急に長期出張になったら。災害が起きたら。
犬の一生は、15〜20年にわたります。
その間に飼い主の生活環境は変わります。
「自分に何かあったときにどうするか」を考えておくことも、飼い主の責任です。
信頼できる引き受け先(家族・友人・施設)を確認しておきましょう。

17. 犬との暮らしをオープンにできる
これは必須条件ではありませんが、SNSやコミュニティを通じて愛犬の様子を発信できる環境があると、飼い主自身にも多くのメリットがあります。
同じ犬種の飼い主、保護犬を応援する支援者、困ったときに相談できる仲間がいることは、犬との暮らしを豊かにします。
まとめ:「犬を飼えるかどうか」のチェックリスト
全項目に自信をもって「はい」と言えるなら、あなたは犬と暮らす準備ができています。
- ペット可の住宅に住んでいる
- 家族全員が賛成している
- 年間30万円以上の犬への支出が可能
- 脱走対策に真剣に取り組める
- 1日の留守番が9時間以内(または対策がある)
- 朝晩30〜60分の散歩時間がとれる
- しつけを学ぶ姿勢がある
- 家族構成が適している(乳幼児・未婚・未成年でない)
- アレルギーへの備えができている
- 犬が20歳まで生きても面倒をみられる年齢である
FAQ:よくある質問
これから犬を迎えようとする段階の方からよくいただく質問と、それに対するSuzyの回答を紹介します。
Q. 一人暮らしでも犬を飼えますか?
A. 飼えます。ただし留守番時間の問題は必ず出てきます。
老齢の両親に実際の世話を丸投げしているケースも少なくありません。
しかし、月日が経つにつれて犬の世話を任せていた両親も老いていきます。
高齢者をあてにして犬を迎えることはお勧めできません。
ペットシッターや犬の保育園の利用も含めて、現実的に対策を考えたうえで犬を迎えてください。
また、転職や結婚・出産などのライフイベントを検討する際も、「愛犬とともにある」ことを前提とした選択をすることが必須の条件となります。
Q. 子犬と成犬、どちらが初心者向きですか?
A. 初めて犬を飼う方には、成犬を強くお勧めします。
子犬を育てるのには「人間の赤ちゃんを育てる」に近い手間と労力がかかります。
成犬はすでに身体の大きさや性格も分かっており、ミスマッチが起きにくいです。

Q. 保護犬は問題行動が多いのでは?
A. 必ずしもそうではありません。
多くの保護犬は適切な環境と関係性さえ整えれば、普通に穏やかな家庭犬として暮らせます。
過去の経緯よりも「これからどう向き合うか」の方がずっと大切です。
Suzyの数千頭の家庭犬へのしつけ指導の経験と、保護犬の譲渡活動の経験を踏まえると、「保護犬のほうが楽」だとすら思っています。
Q. しつけは自分でできますか?
A. 基本は自分でできます。
ただし問題行動が出たとき、「独学でなんとかしよう」と頑張りすぎると、こじれることが多いです。
早めにプロに相談することが解決の近道です。
あなたにピッタリの情報かも?
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