犬を飼うという言葉を聞いて多くの人はペットショップで”子犬”を購入するとイメージしがちです。
お迎えする犬を選ぶ視点:子犬か成犬か?
犬と一口に言っても、選ぶときに考慮すべき項目がたくさんあります。 子犬か成犬か? 初めて犬を飼うときイメージするのはまず「子犬」でしょう。ですが、子犬を一から育てることには、多大な時間と労力を要します。まだ、心も体も未発達のため、どのように育つかは、すべて飼い主の接し方と与えた環...
犬の子育ては時間との戦い
しかし、初めてで何もわからない状態から子犬をちゃんと育てるのはとても大変なことです。
人間の子ども同様に幼少期に心身の発達を促すことはとても重要なことです。
そのうえ、犬の子どもは人間の子どもと比較にならないほどあっという間に大人になります。
犬の年齢を人間の年齢に換算すると?
「Dog Year」という言葉があります。イヌはヒトよりも、うんと早く歳をとり寿命を迎えるので、ものすごく(時間の)スピードが速いことをさして、そのように表現します。行動と認知の面からみた、犬と人間の年齢の比較にかんして、「Frontiers in Veterinar...
以下を見てわかるように犬の子育てにおいては、わずか1年足らずで中学生にまで成長するということになります。
犬の年齢と人の年齢
子犬のへや【最新版】犬と人間の年齢換算表・体型別一覧より引用
ちなみに、子犬が手元にやってくるのは早くても生後2カ月程度となります。
なぜならば、動物の愛護及び管理に関する法律(動愛法)で、
(幼齢の犬又は猫に係る販売等の制限)
第二十二条の五 犬猫等販売業者(販売の用に供する犬又は猫の繁殖を行う者に限る。)は、その繁殖を行つた犬又は猫であつて出生後五十六日を経過しないものについて、販売のため又は販売の用に供するために引渡し又は展示をしてはならない。
と決められており、それより早く販売することはできない(販売したら違法)からです。
この期間に母犬や兄弟犬たちとともに暮らし飼養者とのかかわりもきちんともつことができた子犬は精神的に安定した育てやすい犬になる傾向があります。
しかし、現実的にペットショップに届くまでの生後56日間もほとんどの子犬はこうした育ちをしてきていないと考えます。
ペットショップに流通する子犬たちの背景を知る
ペットショップの店頭で子犬を購入する飼い主たち(消費者)は、自分の家族の一員にしようと思って購入していますが、店頭で販売されている犬たちは、そもそも「産業動物(経済動物)」であるということを頭に入れておかなければいけません。産業動物の対義語は「野生動物」です。 人間社会の存在に...
子犬に必要な経験を与えられるか?
犬は人間と家庭で暮らすとしても日常生活のなかで他の犬とのかかわりを避けて生活することはできません。
犬同士でのコミュニケーションがとれる必要があります。
たくさんの子犬や大人の犬たちとしっかりとかかわることで犬同士のコミュニケーション方法を学びます。
こうした関わりをもつ機会を一般家庭で与えることは難しいです。
思春期の犬(生後6カ月~2歳頃)
ペットショップやブリーダーから子犬を買ってきて、ワクチン接種を済ませ、ようやくお散歩デビューをしたと思ったら、あっという間に生後6カ月くらいになっています。 まだまだ可愛い赤ちゃんだと思っていたのに「思春期」と聞いて、驚く飼い主さんはたくさんいらっしゃいます。 犬にも思春期がある 犬にも思春期...
ワクチンが終わるまで他の犬と触れ合えない
ペットショップから家に迎えたあとも獣医師からは「伝染病予防ワクチン(5種とか8種とか呼ばれるものです)の追加接種や狂犬病ワクチンの接種が終わるまで外に出してはいけない」と言われます。
すべてのワクチンを接種し終えたとき早くてもすでに生後4か月ほどになっています(人間に例えれば小学校入学くらいの年齢)。
つまり、人間の子どもが幼稚園に通う時期をまるまるすっ飛ばしてしまうことになります。
幼児期に心身の発達を促す機会をもてないことによる弊害が起こると後からのリカバリーが大変になります。
もちろん、後からでも学べますが幼齢期とくらべて時間がかかったり到達できるレベルにちがいがでることは否めません。
ただし、いくら幼齢期に教えても身につかないものもあり発達に応じて教えるべき事柄は変わってきます。
子犬のときにしつけ損なったから「もう無理」ということは決してありません。
犬の思春期:行動や性格の変化について知る
犬にも思春期があるって知っていますか? 犬は生後6カ月あたりから思春期に入ります。子犬のときとは心も体もおおきく変化していきます。飼い主はそのことを念頭において愛犬への対応の仕方を変えていく必要があります。 愛犬が我が家にやってきたばかりの頃は… 生後2カ月足らずでお家にやって...
お散歩デビューでアタフタ
ワクチネーションが終了して、それまでに自分以外の犬とかかわりをもつ機会のないまま成長した子犬が初めてお散歩に出ると外の世界のいろいろに圧倒されます。
たとえば、
- 走っている車(の音)
- 自分のすぐ脇をすり抜けていく自転車
- いろいろな匂い
- 地面の踏み心地
- 首輪や胴輪の感触
- リードの感触
- 鳥や猫などの犬以外の動物の存在
- 自分以外の犬
などです。
それを、怖いと感じるかワクワクするかは子犬の性格次第ですが、いずれにしてもいきなりたくさんの刺激に圧倒されることにちがいはありません。
このときに、飼い主が母犬に代わってきちんと子犬を導くことが必要になります。
ですが、初めて犬を飼う人が予備知識なしにそれを見極め適切に対処することは難しいです。
飼い主の誤った対応によって子犬の性格が極端になってしまい、その後の生活の行動範囲がとても狭くなってしまうことは飼い主にとっても犬にとってもすごく残念なことだと感じています。
あっという間に思春期突入!
生後6か月前後から犬も思春期に入ります。
飼い主は生後6か月の犬を人間の生後6か月と同程度の赤ちゃんと思いがちです。
しかし、年齢換算表を参照すると人間の子どもにおけるギャングエイジの世代に該当します。
まったく赤ちゃんではありません。
女の子は生理が始まりますし、男の子も繁殖欲に目覚めます。
そして、今までは飼い主のいうことに比較的素直に従ってきた子犬もいったん反発してみるといった行動をとるようになります。
やっと、この子との暮らし方がわかってきたところだったのに、いったいどうしちゃったの?
と、飼い主は少し不安になります。
しかし、「まだ赤ちゃんだから」と何も対処せずそのままにしていると…
思春期に突入した犬たちの行動
- 触ったら噛みつかれた
- 吠えまくってご近所からクレームがきた
- フードにトッピングしないと食べなくなった
- 他の犬に吠え掛かるので散歩が苦痛
など、
さまざまな困りごとに発展しどんどん手が付けられなくなってしまいます…。
思春期は早い子で生後4か月(和犬に多い)、遅い子で2歳前後に始まります。
飼い主を困らせる程度や犬自身の苦しみの程度に個体差はありますが、どんな犬にも心身の成長にともなって訪れるものです。
思春期はその犬の一生を左右する犬格形成(人格形成)の時期です。
犬の思春期:行動や性格の変化について知る
犬にも思春期があるって知っていますか? 犬は生後6カ月あたりから思春期に入ります。子犬のときとは心も体もおおきく変化していきます。飼い主はそのことを念頭において愛犬への対応の仕方を変えていく必要があります。 愛犬が我が家にやってきたばかりの頃は… 生後2カ月足らずでお家にやって...
思春期の犬(生後6カ月~2歳頃)
ペットショップやブリーダーから子犬を買ってきて、ワクチン接種を済ませ、ようやくお散歩デビューをしたと思ったら、あっという間に生後6カ月くらいになっています。 まだまだ可愛い赤ちゃんだと思っていたのに「思春期」と聞いて、驚く飼い主さんはたくさんいらっしゃいます。 犬にも思春期がある 犬にも思春期...
まず、思春期が始まる前後には避妊去勢手術を済ませます。
それと並行して3歳くらいまでのあいだトレーニングに取り組み飼い主自身が愛犬とのコミュニケーションの取り方を身につけることで信頼関係を築く必要があります。
思春期のしつけを学べない
しかしながら、この大切な時期にある思春期の犬のしつけ方を教えてくれる場が滅多にないのが現状です。
理由としては、
- 動作を教える=「犬しつけ」という概念がペット業界に浸透している
- 分かりやすい芸(フセやお手など)を教えるほうがラクだし、楽しい
- 本来の「犬のしつけ」は「長く通わせて収益を上げる商売」として成り立たない
- 飼い主が犬の問題行動を犬のせいにしておきたい(自分の行動は変えたくない)から踏み込めない
- 若犬~成犬による生活上のトラブルに対処できるスキルをもつトレーナーが少ない
などが挙げられます。
現在までの日本のドッグトレーニング業界は(1)~(4)の結果、単に愛犬に芸を仕込みたい富裕層にしか需要がないのが現状です。
生徒の犬もあくまでも教養のひとつとして学びにくるだけで特段大きな問題を抱えているわけではありません。
需要がないのでプロフェッショナルもわざわざ苦労して(5)のレベルまで習得しないため『本当に困っている飼い主を救える場所になっていない』という悪循環の中にあります。
このように、子犬を迎えてわずか1年足らずのあいだには重要な時期がいくつも存在します。
そのうえ、飼い主がすべてを理解できるまで時間は待ってくれません。
性格の不一致によるネグレクト発生
購入時点でその犬の性格を完全に見極めることはプロにも不可能です。
なぜなら、その後の経験や飼い主の対応によって変化は未知数だからです。
大枚をはたいて買った子犬が自分の思い描いていた犬との暮らしを実現してくれないとなったとき飼い主はとても残念な気持ちになるでしょう。
または犬のしつけに失敗してしまったと後悔するかもしれません。
欧米社会の責任の取り方
西洋思想の欧米では自分が管理できない犬は処分することが飼い主の責任と考えるのが当然の社会です。
たとえ健康な犬であっても飼い主が自分の手に負えないのなら殺処分することが当たり前の選択肢として存在します。
日本人の責任の取り方
しかし、東洋思想が根底にある日本人においては愛犬が治らない病気で痛みに苦しんでいてさえもなお安楽死をためらう飼い主がほとんどです。
その結果、扱いづらさの解決は放置したまま死ぬまでなんとなく飼われているという犬たちも決して少なくありません。
飼い主は犬を捨ててはいないけれど「その暮らしは犬にも飼い主にもお互いにとってあまりにもつらくないだろうか?」という環境で生活している飼い犬は決して少なくないです。
以下は、Suzyが実際にしつけ相談の場で飼い主さんたちから聞いたものです。
- 引っ張られて大変だから散歩には連れて行かず庭に放置している
- 吠え声が近所迷惑にならないよう犬は閉め切った真っ暗な部屋に置いている
- 誰にも会わないように夜中に散歩に出て、人や犬にあったら逃げるように走り去る
たしかにこれらの犬たちは人間に飼われています。
しかし、食と住がかろうじて与えられているだけで飼い主との交流はありませんでした。
こうした性格の不一致によるネグレクトは表面化されていないだけで決して少なくないと考えます。
相性の合う成犬と出会う
犬の2~3歳は人間でいえば20代半ばから30代半ばくらい。
心身ともに充実した時期になり性格傾向も定まってきます。
3歳以上の成犬で自分の家族のライフスタイルにマッチした犬を最初から迎えておけば、お互いに無駄な時間や労力を割かなくても済むということを私は声を大にしてお伝えしたくこの記事を書いています。
保護犬の成犬譲渡
ペットショップでは売れ残りを除き子犬しか販売していません。
しかし、新しい飼い主を探している保護犬は子犬も成犬もいます。
子犬は収容後すぐに譲渡に出されますが成犬は経験豊富な多くのボランティアが関わり手塩にかけて家庭犬となるための準備をしたうえで譲渡されます。
本当に犬のことを考えて保護活動を行なっている人たちは商業的に販売している企業とちがいその犬が二度と捨てられないことを第一に考えて譲渡先を選定します。
物理的な環境条件のみならず飼い主家族の生活スタイルとのマッチングもしっかりとおこなうケースがほとんどでしょう。
成犬のいいところ
成犬を迎えることのメリットはたくさんあります。
- すでに大きさが確定している
- 排泄のサイクルが長い
- 一から教えなければいけないことが少ない
- 犬同士のコミュニケーションスキルを習得済み
以下に、一つずつ解説していきます。
その1:すでに大きさが確定している
子犬は大人になるまで実際にどれほどの大きさになるかわかりません。
2キロぐらいと思っていたら8キロまで大きくなったというチワワもいます。
保護犬も子犬は親犬が不明なことも多くどれほど大きくなるかわかりません。
ペットの大きさの決まりが厳格な集合住宅では飼い続けられない可能性もあります。
しかし、すでに3歳を過ぎていればそこからさらに骨格が大きくなることはまずありません。
飼い主が太らせすぎないよう体重管理にさえ気を付ければ大きさが想定外という問題は起こりません。
その2:排泄のサイクルが長い
人間の赤ちゃんを育てるとき赤ちゃんは1日に何回もおしっこやウンチをするので、そのたびに1日になんどもオムツ替えをしなくてはなりませんでした。
そして、成長とともに徐々に排泄の間隔が長くなりオムツを替える回数が減っていきます。
犬も人間同様、子犬のときは排泄の間隔が短く1日になんどもおしっこやウンチをします。
オムツの中に排泄すればいい赤ちゃんとちがって家に迎えた子犬はトイレトレーニングも並行しておこなっていかなければいけません。
トイレシートに排泄物を残したままにしておくと、ウンチまみれになったりトイレと寝床の区別が付けられなくなってしまいます。
その結果、寝床におしっこをしてトイレに寝てしまうなどトイレを覚えるのが難しくなってしまいます。
トイレのしつけはタイミングを逃さず教えなければなりません。
とくに、お散歩デビュー前の2カ月間は排泄の間隔も短く片時も目を離すことができません。
成犬のトイレトレーニングのほうが実は楽
しかし、すでに成犬になっていれば排泄の間隔は1日に1~2回程度になっています。
また、子犬とちがって寝床と排泄場所は分けたい心がすでに備わっています。
おなじトイレトレーニングをするのでも子犬と成犬では教える内容や方法が変わってきます。
もちろん、成犬のほうが教えるために飼い主が割かねばならない時間は少ないです。
その3:一から教えなければいけないことが少ない
首輪が付けられないほど人を怖がって暴れる犬やクレートに入ることもできない犬は一般譲渡の対象になっていないはずです。
譲渡対象になっている犬たちは、
- クレートの中で静かに休める
- 留守番ができる
- 首輪をつけられる
- リードで散歩ができる(飼い主と呼吸を合わせるのはこれから)
- ブラッシングができる
- シャンプーができる
- 爪切りができる
など、犬ができるようになるまでに飼い主が苦労することの大半が、すでにできるようになっています。
なかには、すでにトイレシートでの排泄もできていたり歯磨きができる子もいます。
その4:犬同士のコミュニケーションスキルを習得済み
保護犬の多くは保護期間中に多くの犬たちとかかわりをもって暮らします。
この環境は普通の飼い主には愛犬に与えてあげることができないとても貴重な環境です。
不慣れな環境で頼れるのは人間よりも先輩犬。
集団の中でうまくやっていくために犬同士のコミュニケーションをしっかりと覚えます(いや、叩き込まれるのかも?)。
このため、ほとんどの飼い主が上手に教えることのできない犬同士の上手なかかわり方をすでに身につけていることが多いです。
ただし、これは犬として礼儀正しいふるまいができるかということであってフレンドリーかそうでないかということではありません。
何歳からでも家族になれます
不慣れな状態から子犬を育てるのは大変です。
しかし、すでに大人になった犬を家族に迎えれば犬との暮らしのファーストインプレッションが全然違ったものになります。
子犬を飼うのは2匹目からがお勧め
まず初めに成犬を飼ってみて、次は子犬からにチャレンジしてみようと思えたら子犬を迎えてはいかがでしょうか?
そのときも、ぜひ保護犬から「ウチの子」を探してほしいと思います。
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