– 「低い声で命令するといい」と聞いたけれど、本当?と思っている方
– 家族によって犬の反応が違う気がする、と気になっている方
– 叱るとき・褒めるときの「声の使い方」を見直したい方
犬はあなたの声を、思っているより「ちゃんと」聞いている
「うちの子、呼んでも来ないんです」
「おすわりって言っても、知らんぷりで……」
こんなお悩みをよくいただきます。
でも、うまくいかない原因は愛犬の「やる気」ではなく、あなたの声の届け方にあるかもしれません。
2022年にイギリスで発表された研究が、犬の「声の聞き方」について、とても興味深い事実を明らかにしました。
実験でわかったこと
研究者たちは、女性が「座れ(Sit)」「伏せ(Lay down)」「来い(Come here)」と犬に命令する声を録音し、その声に4つのパターンの操作を加えて、犬の反応を比較しました。
- そのまま(元の女性の声)→ よく従った
- 声の高さだけを男性っぽく低くした声 → 反応が鈍くなった
- 声質(声の太さ・こもり方)だけを男性っぽくした声 → 反応が鈍くなった
- 高さも声質も、両方まとめて男性っぽくした声 → よく従った
ここで注目したいのは②と③です。
どちらか一方だけをいじった「中途半端な声」には、犬の反応が落ちてしまったのです。
なぜ「中途半端な声」に反応が鈍くなるのか
人間の声には、大きく2つの要素があります。
ひとつは音の高さ(ピッチ)。
声帯の大きさで決まります。
男性は声帯が大きいため、女性より声が低くなります。
もうひとつは声質・音色。
口や喉の形・長さによって生まれる「声のこもり方」や「太さ」です。
人間の声では、この2つは自然に組み合わさっています。
男性の声は「低くて太い」、女性の声は「高くて細い」――この「セット」が一体となって届くのが、自然な声です。
犬は毎日人間の声を聞き続けることで、この「セット」をまるごと学習しているのだと、この研究は示しています。
だから、どちらか一方だけを変えた「不自然な声」は、犬にとって「あれ、知ってる声と違う……」という戸惑いを生んでしまうのでしょう。
「低い声で命令を」は、本当か?
「犬には低い声で命令するといい」とよく言われます。
これは完全に間違いではありませんが、「ただ低くすればいい」というわけではないことが、この研究からわかります。
無理にしぼり出した低い声は、普段のあなたの声と「声質」が合いません。
犬はその「ちぐはぐさ」を、敏感に感じ取っている可能性があります。
大切なのは「自分らしい声で、一貫して」届けること。
作った声より、自分の自然な声でしっかりと命令するほうが、犬には伝わりやすいのです。
しつけの現場で感じること
20年以上、犬のしつけに関わってきた私の経験からも、この研究結果はとても腑に落ちるものでした。
叱るときの声と、褒めるときの声。これは高さだけでなく、声全体から漂う雰囲気・確信・感情のパッケージとして犬に届いています。
「ダメ!」と言葉では叱っても、声がふわふわしていたり、不安そうだったりすると、犬には伝わりません。
逆に、「よし!」と褒めるときも、心から嬉しそうな声でなければ、犬の心には響かない。
声は、あなたの「今の状態」をそのまま映し出す鏡です。
家族によって犬の反応が違うのはなぜ?
「お父さんが言うと従うのに、私が言うと聞かない」という話もよく聞きます。
これは声の高低だけの問題ではなく、命令を出すときの「声の一貫性」と「確信の度合い」の違いから来ていることが多いです。
大切なのは、家族全員が同じ言葉・同じトーンで統一して命令を出すこと。
男性の声でも女性の声でも、そのパターンが一貫していれば、犬はきちんと認識してくれます。
今日からできること
**命令の声は「作らず、一貫して」**
無理に低くしようとするより、自分の自然な声で毎回同じトーンで命令しましょう。
**褒める声と命令する声は、はっきり区別する**
命令のときと褒めるときで、声の雰囲気をきちんと変えることが大切です。犬はその「違い」で、意味を理解しています。
**家族で声の使い方を揃える**
使う言葉だけでなく、声のトーンもできるだけ揃えましょう。犬は言葉の意味よりも、声の「パターン」で覚えています。
「普段の声」がベースラインになる
ここで、ひとつ大切な話をさせてください。
犬が「ピッチと声質のセット」を学習しているということは、裏を返せば、あなたの「いつもの声」を基準に、すべてを聞き分けているということでもあります。
私がしつけ指導でよくお伝えしていることがあります。
普段のベースラインを、穏やかに保つことです。
もし、普段から常に緊張感のある低い声、厳しい声で犬に接していたとしたら、どうなるでしょうか。
緊急のときに大きな声を出しても、叱るときに声を荒げても――犬にとっては「いつもと同じ」に聞こえてしまいます。
「緊急性」も「叱り」も、ベースラインとの落差があってはじめて伝わるのです。
ちょうど音楽のように、「静」があるから「動」が映える。
穏やかな普段の声があるから、命令は締まって聞こえ、叱る声に重みが生まれます。
逆に言えば、愛犬にきちんと叱りを届けたい人こそ、普段の指示は穏やかな声で接することが大切です。
まとめ
犬は「声の高さ」と「声質」の両方を、セットで聞いています。
どちらか一方だけを変えた「不自然な声」には反応が鈍くなり、自然に組み合わさった声にはよく反応する――これが科学の示す事実です。
「うちの子、言うことを聞かない」と思ったとき、愛犬を責める前に、一度自分の声を振り返ってみてください。
声は、あなたと愛犬をつなぐ、大切なコミュニケーションツールです。
参考文献
Sturdy, S.K., Smith, D.R.R. & George, D.N. (2022). Domestic dogs (Canis lupus familiaris) are sensitive to the correlation between pitch and timbre in human speech. *Animal Cognition*, 25, 545–554.
https://doi.org/10.1007/s10071-021-01567-4
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