もう、二十年以上も前から、あまりにもたくさんのワンちゃんたちがシュルシュルと伸び縮みする「伸縮式リード」を使ってお散歩をしている姿を見かけます。
このため、伸縮式リードを散歩の定番アイテムと勘違いしている飼い主さんも少なくありません。
犬が自由に歩いているように見えるこの道具は「犬が喜ぶ」「便利そう」という印象を飼い主に与えるかもしれません。
ですが、日本の住環境や犬のしつけ、安全面を考えると、このリードは実は「百害あって一利なし」と言っても過言ではないのです。
この記事では、伸縮式リードの構造や特徴、このリードを使うことでどんな事故が起こりうるのか、そして代わりにどんなリードがオススメなのかを詳しく解説していきます。
伸縮式リードとは?
伸縮式リードは巻き尺のような仕組みでできたリードです。
犬が引っ張ると紐が伸び、引きが弱まると紐が自動で巻き取られる構造になっています。
代表的な製品にドイツの「フレキシリーシュ」(Flexi leash)があります。
持ち手部分にはストッパー(ロック)が付いており、任意の長さでリードを固定することもできます。
この自由度の高さが「犬にとって楽しい散歩になる」と誤解されがちですが、実際には多くのリスクを伴います。
伸縮式リードに端を発した事故は数十年前から発生していて、裁判沙汰になったケースもたくさんあります。
なぜ伸縮式リードが危険なのか?
Suzyが伸縮式リードをお勧めしない理由は主に以下の3つの理由によるものです。
- 愛犬との絆を育めないから
- 訴訟のリスクが極めて高いから
- 飼い主自身がケガをすることも
1.愛犬との絆を育めないから
通常のリードを使ったお散歩では、リードを持つ手の動きや力加減によって愛犬と微細なコミュニケーションをとることが可能です。
これは犬にとって飼い主の意図を感じ取る重要な手段となります。
しかし、伸縮リードは紐を巻き取る力が犬につねに一定の負荷をかけ続けるため、リードをもつ手の力加減を利用したコミュニケーション方法を使うことができません。

Suzyは飼い主が愛犬と信頼関係を築く方法として首輪とリードを使ったコミュニケーションを非常に重要視しています。リードはただ漫然と持っているのでは意味がありません。リードを持つ手の微妙な動きをとおして犬に「して欲しいこと・して欲しくないこと」を伝えながら歩くのが散歩中の飼い主の役割な...
このため、犬は「自分で行動を決める」ことに慣れてしまい「飼い主と心を通わせて歩く」ことを学べなくなります。
伸縮リードの使用は引っ張り癖や他犬への吠え・飛びつきなどの問題行動を助長する原因となり、しつけの定着を妨げることになるのです。

愛犬のとる行動のうち、飼い主さんが困って辞めさせたいと思う行動には以下のようなものがあります。どれもこれも、犬という生き物が生まれながらに備えている行動でありながら、人間社会の中では困った行動になってしまうものです。 噛む 「噛む」という行為は犬にとっては当たり前の行動ですが、人間社会で...
このような状態になると、オヤツを使って犬を操作するしか愛犬に「言うことを聞いてもらう方法」がなくなってしまい、愛犬と心の通った関係を築くことができなくなってしまいます。

犬のしつけの本を読むとほぼ100パーセントの確率で「ご褒美にオヤツをあげましょう」と書いてあります。オヤツを使ったトレーニングは犬のモチベーションを高め、効率的に学習を進めることができる有効な方法のひとつです。しかし、いくつかの問題点も存在するため「犬のしつけ」でご褒美にオヤツを使お...
2.訴訟のリスクが極めて高いから
伸縮式リードを使ってお散歩をしている飼い主さんは、実際に以下のような事故を起こしたり、ヒヤリ・ハットの場面に遭遇したことがきっとあるはずです。
1) 他犬や人に飛びかかってケガをさせる
ストッパーのロックが間に合わず、他の犬に突進していきケンカになって噛み合いに発展することがあります。
また、人に対して突進していき、噛みついたり飛びついたりしてケガをさせてしまうこともあります。
いずれのばあいも、相手にケガをさせてしまったことによる賠償問題が全国あちこちで発生しています。
2) ベビーカーや自転車を転倒させる
伸縮式リードの紐は糸のように細く、とくに夕方のお散歩ではよほど近くまで近づかなければリードが見えません。
ベビーカーや自転車などが引っかかって転倒し、乗っていた人の重大なケガにつながることがあります。
とくに、赤ちゃんや子ども、老人にケガを負わせたことで訴訟となり、責任問題や賠償問題になることもあります。
3) 犬が車道に飛び出して事故に
ストッパーの故障や(飼い主の)反応の遅れで犬が車道に飛び出し、犬が命を落とす事故も実際に起きています。
3.飼い主自身がケガをすることも
人は慌てると冷静な行動をとれないことがあります。
ストッパーのボタンを押すよりも前に、伸縮式リードをとっさに素手でつかんだ結果、紐との摩擦で手のひらに火傷を負う事例も珍しくありません。
もしくは、細い紐が指に食い込み、裂傷につながることもあります。
伸縮式リードをどうしても使いたい場合
伸縮式リードを完全に否定するわけではありませんが、使うには以下の4つの条件を守ることが必須です:
最低限のルール4つ
- 広い原っぱや公園など、近くにほかの人や犬がいない場所限定で使用する
- 広い場所での遊びやトレーニング(ボール投げや呼び戻し)の場面限定で使う
- 使用後は必ず通常のリードに切り替える
- 使用時は常にストッパーに指をかけて即座に制御可能な状態にしておく
このように、伸縮式リードは「遊び道具」であって「日常のお散歩には不向き」です。
遊ぶときだけ着け替える
ボール遊びやフリスビー投げができるほど広い場所に出かけたときに、遊ぶときだけ「着け替えて」使用するのが狭い日本での「伸縮式リード」の正しい使い方です。
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注意を怠らない
そして、つねに周囲に気を配り、もし、突然に犬が急に走り出したとしてもすぐに制御できるよう、つねにストッパーに指を置いておくことを忘れないことです。
客観的な判断を
もし、まだ愛犬のしつけが十分にできていないと思うのであれば、伸縮式リードは「まだ使用しない」という客観的な判断を下せる飼い主であってほしいと願います。
飼い主自身の行動が、犬の未来を守る
「犬嫌いは犬好きが作る」と言われるように、(故意であってもなくても)マナーを守らない一部の飼い主の行動が、犬を飼う人たち全員に対する印象に悪影響を及ぼします。
リードが「伸びる」ことは犬を飼っている人しか知らない
まず、「伸縮式リード」というものは、だれもがその機能を知っている道具ではありません。
犬を飼っていない人はリードが突然伸びるとは夢にも思っていません。
また、細い紐は遠くからは人に見えません。
このため、思わぬ事故につながる事例が後を絶たないのです。
犬の散歩中の事故はケガをしてもさせても不幸です。

ご近所との関係をよくする 「犬のしつけ3原則」で、取り上げた3つの項目の最後は、「ご近所との関係をよくする」でした。 過剰に強い同調圧力の文化をもつ国、ニッポン 日本社会の欠点として、過剰に同調圧力の強い文化が問題視されています。そんな環境において、「他人の目を気にしない」とい...
お散歩の際は安全性を重視したツールを用い、しつけをしっかりする必要があります。
そのうえで、万が一の時のために損害保険に入っておくことも大切です。
犬を飼っている方は契約中の保険が犬にかかわるトラブルも補償に含んでいるかを確認しましょう。
伸縮式リード使用禁止の場所も増えている
一部の自治体の公園やドッグランでは、伸縮式リードの使用が明確に禁止されています。
これは、これまでに実際に事故やトラブルが多発している証拠です。
- 駅前や商店街などの人混み
- 公園内(注意書きがある場合)
- 子どもや高齢者の多い住宅街
こうした場所では必ず通常のリードに切り替えて、リードを短く持って歩きましょう。
「うちの子は大丈夫」と思っていても、万が一のときには取り返しのつかない事態になりかねません。

「犬の飼い主」は、20代半ばくらいの比較的若いファミリーから孫がいる70代後半くらいのシニア層まで、幅広い年齢層の方がいらっしゃいますが、「犬のしつけ」という言葉の捉え方は、年齢層によって大きく違うなぁと感じています…。 60代以上の飼い主さんの傾向 昭和の時代の記憶がしっかりと残る世代は、それ...
伸縮式リードによる事故や迷惑行為が増えると、犬の立ち入りが禁止される場所が増えたり、犬の散歩コースに毒餌が撒かれる(誤食による犬の死亡事故)といった悲しい事件が地域で起きてしまう原因にもなります。
たとえ一部の人であったとしても、犬の飼い主による他者への配慮を欠く行動は、その地域に暮らす全ての飼い主と犬にとっての大きな損失です。

多くの飼い主が愛犬に対する知識や理解を深める必要性を感じることなく、日々の生活を送っています。彼らは自分の犬のことを十分に理解していると信じ込み、何の問題もないと考えているかもしれません。 なぜ、自覚がないのか? なぜ、学ぶ必要がある飼い主ほどその自覚がないのでしょうか?それには...
正しいリードの選び方
犬の散歩は、愛犬と飼い主の大切なコミュニケーションの時間です。
普段のお散歩(狭い場所や人混み)では、細かな指示を出せる普通のリードを使います。
伸縮式リードを使っていたけれど、通常のリードに切り替えたことで犬の行動が落ち着いたという例は多数あります。
道具ひとつを変えるだけで、愛犬との関係性や散歩の質は大きく変わります。
通常のリードを使って飼い主さんと心の通い合う関係を構築できた犬は伸縮式リードを好みません。
飼い主が手からリードを取り落としたら、何も言われなくてもその場に留まり、飼い主がリードを拾うまでじっと待つ子に育ちます。

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普通のリードが一番
これからリードを購入する方、買い替えを検討している方には以下のような「通常タイプのリード」をおすすめします。
- 長さは、1.2~2.0m程度
- テープ幅は中型~大型犬にはやや太め(2cm~)を
- 紐にある程度の厚みがあって握りやすいもの
- 素材はナイロンや革など強度のあるもの
リードの選び方は以下のページでもっと詳しく説明しています↓

ワンちゃんとのお散歩に使うリードはファッションアイテムではなく命綱です。また、リードは愛犬に飼い主の意思を伝える大事なコミュニケーションツールでもあります。リードをもつ手の動きで、犬に「してほしいこと・してほしくないこと」を伝えます。なんでもよいわけではありません。リードの形...
ロングリードも検討してみて
また、自由運動には伸縮式リードではなくロングリード(5m〜10m)を併用すると良いでしょう。
まとめ:安全と信頼を育てるリード選びを
便利そうに見える伸縮式リード。
しかし実際には、事故のリスク、しつけへの悪影響、他者への迷惑など、数々の問題が潜んでいます。
愛犬を守るために、周囲の人を守るために、そして犬たちが社会の中で安心して暮らし続けていけるように、今一度、愛犬に使うリードを見直してみましょう。
「わざわざ危険な道具を使わない」——それが、安全で快適な犬との暮らしの第一歩です。
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