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ほかのワンちゃんと仲良くしてほしい

犬とともに暮らす楽しみの一つは、お散歩でいろいろなワンちゃんと出会い、交流をもつことではないでしょうか?

じつは、母犬から犬社会の社交スキルを学ぶ前に親元を離れて人間と暮らし始めた犬たちのほとんどが、犬社会の礼儀やマナーを身につけていません

飼い主が母犬代わりとなって愛犬に「犬社会のマナー」と「人間社会のマナー」を身につけさせる必要があるのです。

犬のしつけとは究極的に言えば、自分の犬にこのふたつを身につけさせることであると言えます。

犬社会常識ルール4つ

飼い主が母犬代わりとなって愛犬に「犬社会のマナー」を教えるにあたっては、飼い主は以下の4点をきちんと理解しておかなければなりません。

  1. お尻の匂いを嗅ぎあう
  2. 年功序列&レディーファースト
  3. 嗅ぎ逃げは「情報泥棒」!
  4. パーソナルスペースの尊重

その1. お尻の匂いを嗅ぎあう

犬の社会で行なわれる「正式な挨拶」は、お互いのお尻の匂いを嗅ぐことです。

なぜ、お尻の匂いを嗅ぐことが挨拶なのでしょうか?

肛門腺の匂いを嗅ぐのが犬の挨拶

犬は、肛門の周囲にある肛門嚢(こうもんのう)に「肛門腺」という強い獣臭をもつ液体を溜めています。

中型犬以上の犬は溜まりすぎた肛門腺を自力で排出することができるケースが多いのですが、小型犬は肛門腺を自力で絞り出すことができずに溜まってしまうケースが大半です。

肛門腺が溜まりすぎると、肛門嚢が詰まりを起こして炎症や痛みを生じるため、トリミングサロンではシャンプーをする際に肛門腺を絞り出してから犬を洗っています。

コメントトリミングサロンでシャンプーをしないのであれば、自宅シャンプーの際に肛門腺絞りをしましょう。飼い主自身で絞り出すのが難しいばあいは、溜まりすぎる前に動物病院で肛門腺絞りをしてもらいます。爪切りと同じくらいの頻度でよいと思います。

この肛門腺には、犬の個人情報のすべてが詰まっています。

犬は相手の匂いを嗅いで性格や健康状態などを知り、その相手とどのように接するべきかを判断します

これを「犬同士の挨拶」と呼びます。

相手を選ぶカジュアルな挨拶

また、犬たちは肛門腺のほかにも、耳の穴や口からも独自の匂いを発しています。

この匂いを嗅ごうとして、最初から相手の顔の匂いを嗅ごうとする犬もいます。

コメント自分のお尻の匂いを嗅がれたくない犬が、顔から挨拶をしに行く傾向があるように思います。相手の顔に自分の顔を近付けていれば、相手の顔が自分のお尻に近づくことができないので。

しかし、これは犬社会の正式な挨拶ではありません。

かなりカジュアルでフランクな挨拶となるため、相手が礼儀正しい挨拶を求めるタイプの犬であるばあい、トラブルに発展します。

コメント顔を突き合わせる挨拶は人間の社会に置き換えると、ハグやキスをするヨーロッパ式の挨拶です。しかし、そのような距離感の近い挨拶の習慣をもつ彼らも、オフィシャルなシーンでは握手をするなど距離を保った挨拶をします。

その2. 年功序列&レディーファースト

犬社会では、挨拶をする順番もきまっています。

その順番を決める条件は、以下の2点です。

  1. 年齢
  2. 性別

年功序列

犬同士の挨拶は年長者が先に相手の匂いを嗅ぐ権利をもっています。

それを無視して若いほうの犬が先に相手の匂いを嗅ごうとすると、年長者がそれを無礼な行為と判断して、喧嘩に発展することがあります。

レディーファースト

本来、犬の社会では繁殖の選択権はメスにあると言われています。

繁殖期になるとメスはオスの発情を促し、交配相手を選択します。

メスは複数のオスと交配する可能性があり、子孫の健康と生存率を高めるために、最も強いオスや、メスにとって魅力的なオスを選ぶ傾向があります。

このことから、挨拶をする際も年齢が同じであれば、犬たちはレディーファーストが当たり前であると考えます。

犬同士を近づける前にする3つの「質問」

このため、犬同士を挨拶させる際は先に飼い主同士が挨拶をして、相手の犬の情報を引き出します。

  1. あなたの愛犬と挨拶をさせてもらえるか?
  2. 相手の犬の年齢
  3. 相手の犬の性別

このほか、犬種や名前を聞くと、飼い主同士の会話がはずみます。

少なくとも、「あなたの愛犬と挨拶をさせてもらえるか」を聞かずに、愛犬を他の犬に近づけてはいけません

条件が同じ、または不明なときは?

同じ年齢・性別同士だったばあい、どちらが先に挨拶をすれば良いのでしょうか?

犬の社会においては、精神的に不安定な状態(より興奮している落ち着きがない吠えている怖がっているなど)のほうが立場が弱いと判断します。

相手の犬の飼い主さんに質問をする余裕がなかったときなど、どちらが先に相手の匂いを嗅ぐ権利を有しているのかを確認することができなかったときは、より興奮している犬のほうが先に相手の犬にお尻を差し出し、匂いを嗅いでもらうことになります。

その3. 嗅ぎ逃げは「情報泥棒」!

嗅ぎ逃げとは

自分はさんざん相手の匂いを嗅いだくせに、自分の匂いは絶対に嗅がせようとしない犬の行為を「嗅ぎ逃げ」と言います。

匂いは個人情報

相手の犬の匂いを嗅ぐということは、相手の個人情報をすべて提供してもらう行為です。

相手が自己開示をしたにもかかわらず、自分の情報を1ミリも与えずに去っていくということは、犬社会においてもとても失礼な行為にあたります。

この状況を、人間の社会に置き換えて考えてみましょう↓

道の向こうから知らない人がやってきて、あなたに声を掛けました。そして、無理やりあなたから「年収」「職業」「家族構成」「資産」「友人の数」「契約している保険情報」「学歴」などを根掘り葉掘り聞きだしたうえ、名乗ることすらなく、何も言わずに去っていきました…

怖すぎませんか…。

コメントあなたが得体の知れない相手に無理やり情報を奪われたら、どのような気持ちがするでしょうか。

あなたの愛犬が、自分だけが相手の匂いを嗅ぎ、自分は相手に自分の匂いを嗅がせずに立ち去るということが完全に不審者の行動であることを、想像できたのではないでしょうか。

あなたは大切なカワイイ愛犬を、そのような犬に育てたいなんて絶対に思ってはいないと思います。

愛犬を情報泥棒にしない

しかし、多くの飼い主が愛犬に「嗅ぎ逃げ」を許してしまっているのです。

愛犬に礼儀正しい挨拶を身につけさせることは、親である飼い主の役割が必ずするべきことなのです。

その4. パーソナルスペースの尊重

先に述べたように犬同士が挨拶をする際は、お尻の匂いを嗅ぎあいます。

このため、挨拶をするためには、お互い近い距離まで近づくことになります。

しかし、そこまで近づいてほしくないと思う犬もいます。

自分は相手に興味津々で、たくさん匂いを嗅ぎたいと思っていても、相手の犬がそう思っていないとき、相手の気持ちに配慮できる気配りをしなければトラブルに発展します。

安心できる距離感は犬によってちがう

犬が相手に許すことのできる距離感は、その犬の性格によって異なります。

あまり細かいことを気にしないおおらかな性格の犬はパーソナルスペースが少なめです。

しかし、神経の細かい性格の犬はパーソナルスペースを広く取らなければ安心できません。

また、同じ犬であっても、相手の犬がいつもお散歩で会う顔見知りだったり、気が合う性格の犬であれば、距離が近くても気になりませんが、相手の犬が初対面であったり、慣れない土地であったり、逆に自分のテリトリー内であったりしたばあいは、やはり距離が必要になります。

こうした点についても、飼い主は知っておき、状況に応じて配慮する必要があります。

器の広い愛犬に育てる

「自分が」ではなく「相手の気持ち」を考えて行動できる犬は、「心の器」の広い」犬です。

相手の犬に配慮できる「心の器」が広い犬は、多くの犬から信頼され、好かれる存在となります。

つぎのお散歩から嗅ぎ逃げは卒業!

「ほかのワンちゃんと仲良くしたい」、「お散歩をもっと楽しくしたい」と思ったら、お散歩中の行動のすべてを犬任せにしていては何も解決しません。

飼い主が母犬に代わって、犬社会のルールを教え、犬社会のルールを守った行動がとれる犬になるべく、しつけをしていく必要があります。

パックウォークで学ぼう

他のワンちゃんとの正しいかかわり方を安全に学ぶには、ドッグスクールのグループレッスンに通う方法もありますが、最近はパックウォークも各地で開催されています。

不特定多数のメンバーが集まって一緒にお散歩をしながら、犬について犬と飼い主がともに学びあうお散歩会です。

トレーナーが中心となって、愛犬の苦手克服を参加者どうしが協力し合って進めていきます。

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Shizuka “Suzy” Ishida

Shizuka “Suzy” Ishida

2005年より東洋思想をベースにした「ごほうびにオヤツを使わない犬のしつけ方」を提唱。吠える・噛むの問題を抱えた小型犬のしつけを得意としていますが、保護犬の心のリハビリもしています。当サイトで提示しているしつけ方法はすべての犬に100%当てはまるものではありません。性格や状況によって対処方法はさまざまです。お試しになる際はあらかじめご理解のうえお願いいたします。

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