柴犬(しばいぬ「しばけん」ではありません)。
ブームが始まったのは、どのくらい前だったでしょうか…。
2010年あたりから、しつけ教室にやってくる犬種の割合として柴犬がだんだん増えてきました。
柴犬ブームがやってきた
JKCの犬種別犬籍登録頭数のランキングでも柴犬は長年TOP10圏内に入っています。
柴犬の飼育頭数ランク
- 2022年…9位
- 2021年…7位
- 2020年…8位
- 2019年…7位
- 2018年…5位
依然として人気犬種ではありますが2019年以降は徐々に順位が下がってきていることが見て取れます(それまでの5年間は5位前後)。
飼育の難しさ(特殊さ)について知られるようになってきた結果、柴犬を飼うのを避けるようになったのかもしれません。
和犬(日本犬)と洋犬のちがい
なぜ、「和犬」(わけん)「洋犬」(ようけん)という呼び方があるのでしょうか。
私たちがペットショップなどでよく見かけるさまざまな種類の犬たちの多くは人為的に形質を固定化して作り出した「犬種」で分けられます。
和犬(=日本犬)とは昔から日本に住んでいる犬のことです。
なかでも国が天然記念物に指定した6犬種(柴犬・秋田犬・北海道犬・甲斐犬・紀州犬・四国犬)のことを指して「和犬」ということが多いです。
本記事では和犬のなかでも圧倒的に飼育頭数が多い柴犬を想定して和犬のしつけについて解説したいと思います。
人が使いやすいよう改良されてきた洋犬
おもに欧米で犬を人間の道具として使いやすくする目的で人為的に作り出された犬種をまとめて「洋犬」と呼びます。
キリスト教に根付いた思想
西洋文化においてはキリスト教思想のもと(動物は人間のために神が作ったものであるから)人間には動物を「管理・コントロール」する責任があると考えます。
このため「管理・コントロール」しやすい、つまり「用途に合わせ」「人間のいうことを聞きやすい」犬を作り出すために犬種を作り、繁殖をおこなってきました。
オリエンタル・メソッドによる犬のしつけ方と欧米式トレーニングのちがい
犬のしつけは愛犬との生活をより楽しく充実したものにするために欠かせないものです。 しかし、多くの飼い...
洋犬のおもな仕事
具体的には以下のような仕事をさせる目的のために作り出されました。
- 盲導犬・介助犬
- 警察犬・災害救助犬
- 牧畜犬(牧羊・牧牛)…放牧している家畜を集める
- 護衛犬…放牧している家畜を外敵から守るため外敵と戦う
- 運搬犬…重たい荷物を運ぶ
- 回収犬(間接狩猟犬)…人間が仕留めた獲物を回収してくる役割
これらの仕事内容を見てわかるように西洋の犬種のほとんどは、主人のすぐそばで逐一指示を受けながら人間と協働する仕事を担うという目的のために人為的につくりだされたのです。
また、具体的な使役ではなくただ単に可愛がる対象として人為的に見た目や性質を選択して作り出した犬種(愛玩犬)も小型犬には多いです。
小型の愛玩犬も(和犬と比べて)比較的人間が扱いやすい性質を備えていることが特徴です。
「犬」本来の資質を失っていない和犬
一方、和犬が生み出された過程において犬たちがもともと備えていた特性を変えることはしていません。
洋犬たちのように「管理・コントロール」しやすいとか「人間のいうことを聞きやすい」といった要素は一切繁殖の前提としてきませんでした。
このためオオカミと柴犬のDNAは98パーセント同じであるとも言われています。
Genome sequence, comparative analysis and haplotype structure of the domestic dog書誌情報Lindblad-Toh, K., Wade, C., Mikke...
犬らしさを尊重
われわれ日本人の祖先たちは犬(オオカミ)が本来もっている能力を生かす方法でともに生活を送ってきました。
古来から日本人は犬の「犬らしさ」に備わっている原始的な能力を活用することで犬を自分たちの生活の中に取り込んできました。
固有の犬種として育成することになって以降も「人間が扱いやすい」ということに重きを置かず現在も和犬(柴犬)らしさを極めることを目的に繁殖が進められています。
日本国内での柴犬の繁殖において「一般家庭での育てやすさ」は繁殖条件としてまず考慮されません。
このため、一般の飼い主には「とても扱いにくい気質」をもった柴犬が今日も量産されているのです。
かつての和犬のお仕事
柴犬をはじめとした日本犬たちが飼い主から求められた役割はとてもシンプルです。
- 番犬… 外敵がきたら吠えて知らせる
- 猟犬…犬自身が獲物を見つけ、追いかけ、捕まえるタイプの猟をする(直接狩猟犬)
ときどき「柴犬が警察犬の試験に合格した」というニュースを聞くこともありますがあくまでも例外です。
柴犬の気質・行動面の特徴
一般的な傾向として気質面・行動面における「和犬」の「洋犬」とのちがいを挙げてみます。
パーソナルスペースが広い
屋外で1匹で番犬をしていても平気だったということは1匹でいるほうが気楽なのかもしれません。
ベタベタするのを好まない
トイプードルなどの「愛玩犬」のようにつねに飼い主の膝のうえにいたがる柴犬など見たことがありません。
しつけ教室にやってくるトイプードルの特徴
15年ほど前に始まった、トイプードルのブーム。 毛が抜けず、頭がよく、いろいろなカットを楽しめるので...
柴犬たちは飼い主と同じ部屋にずっと一緒にいるのは近すぎると感じるようです。
基本的には同じ家の中で家族の気配を感じられる距離で十分と考えるようです。
主人命
和犬(柴犬)たちは自分が認めた主人以外は受け入れません。
主人がやることは何でも無条件に受け入れます。
しかし、同じ家族であっても他の人が同じことをしようとすれば牙をむくのが当たり前です。
このため犬に認められなければ、犬に飼われる生活が待っています。
では、和犬たちに認められる「飼い主」になるためにはどうしたらいいでしょうか?
毅然とした態度を求める
和犬に主人と認めてもらうには飼い主の首尾一貫した「毅然とした態度」が必要です。
犬に嫌われたくないからと間違った行動をしても叱らず、わがままな行動も自由にさせているようでは信頼してもらえません。
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そのような飼い主「を」柴犬は徹底的に教育します。
もし、飼い主が迷ってばかりで自信のない性格のばあい愛犬の精神的安定のためにビシっと自分の意思を伝える気迫を出せるように意識して付き合っていく必要があります。
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自らの頭で考え、判断する
和犬は「直接狩猟犬」に分類されます。
西洋ではさまざまな分野の作業の用途に合わせて多くの犬種がつくられましたが和犬は縄文時代から人間の狩りを手伝う仲間でした。
一つひとつの動作をいちいち命令されずとも、いったん山に入れば自らの意思と判断で仲間の犬とともに獲物を追い詰めて弱らせ、主人である人間が仕留めるまで獲物をそこにとどまらせておくのが仕事です。
つまり、逐一飼い主の指示を仰ぐことなく自分で状況を判断して行動するのが「柴犬」なのです。
一方で、洋犬の狩猟犬はおなじ「猟」でも主人が仕留めた(すでに死んでいる)獲物を回収してくることが仕事の「間接狩猟犬」がほとんどです。
主人の指示が出るまでじっと待ちすでに息絶えた獲物を主人の代わりに拾ってくることが仕事です。
一口に「狩猟犬」と言っても求められる素質はまったく異なるものです。
そして、世間でドッグトレーニングとして行われている訓練の大半は「間接狩猟犬」の犬たちが身に付ける内容です。
直接狩猟犬の気質を備える柴犬(和犬)にいくら教えてもなかなか習得しづらい内容と言えます。
文/柿川鮎子、写真/木村圭司 現在、犬はコンパニオンドッグとして、家族の一員となり、大切に飼育されています。しかし、歴史的にみれば、人は長い間、犬を便利に利用してきました。 狩りに便利な犬種が続々登場 特に、狩猟では犬の…
柴犬に洋犬の資質を求めない
そもそも持たされた気質がまったく異なるため洋犬と同じ方法でしつけをしても上手くいかないことが多いです。
柴犬ブームが始まって10年以上が経ち最近では和犬の性質を理解したうえで飼い始める方が増えてきたのは何よりですが、いまだ飼い主が扱いきれずに放棄される柴犬は後を絶ちません。
「柴犬を飼う=オオカミと暮らす」覚悟を
本来の柴犬は相手が犬だろうが人だろうが、気に入らなければ唸ったり、暴れたり、噛みついてくるなど犬(オオカミ)としての本能全開の生き物です。
このため、コマンドで操作するのではなく『いかに、家族(人間)の暮らしと折り合いをつけてともにやっていくか』という視点で共存していく方法を「犬のしつけ」においても考えていくことになります。
だからと言って犬のわがままを聞いてばかりいては『柴犬に認められる主』になることはできません。
こちらが犬の本能を知識として学び、気迫の勝負を挑む覚悟が必要です。
ときどき「オオカミがでちゃう」柴犬たちと「上手くやっていく」ための「接し方」を飼い主が身につけることこそが「しつけ」となります。
その方法は西洋式のドッグトレーニングの経験しか積んでいないトレーナーに教わることはできません。
和犬の扱いに慣れたドッグトレーナーから教わる必要があります。
生後3か月までに和犬仕様のしつけをスタート
ただし、柴犬といえども「三つ子の魂百まで」の効果は期待できます。
ごく幼いうちに、しっかりと飼い主に従うことを和犬向けの方法で教えることができれば、その後、洋犬のように扱いやすくなることも十分にあり得ます。
和犬は精神的な成熟が洋犬に比べて早い傾向があると多くの柴犬たちをみてきて肌で感じています。
生後4カ月頃には思春期が始まり、人間の手に負えない行動を取りはじめるケースも少なくありません。
このため(ではなさそうですが)、生後56日を経過しない子犬を販売してはいけないという2022年施行の改正動愛法の例外として、和犬は生後49日で飼い主のもとへやってくることができるようになっています。
この、ごく幼いうちに手元へやってくることができることを生かし、「しっかりと」しつけをしていくことで『柴犬に認められる主』になれる可能性が高いと感じます。
飼い主さんは柴犬を飼い始めたら、どんなに身体が小さくても赤ちゃん扱いせず、自分の手に負えなくなる前に早めに動くことを強くお勧めします。
大人になった柴犬の気迫に負けてしまうと、彼らの主になることができず、いうことを聞いてもらえることがないからです。
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柴犬には「和犬向けのしつけ」を
柴犬と暮らす飼い主は自分の犬をトイプードルやラブラドールのように「人間の言いなりになるように作られたイヌ」と比較してはいけません。
目の前の愛犬と向き合って、家族と飼い主が互いにより良く暮らしていける方法を模索していってほしいと思います。
和犬のしつけに詳しいトレーナーに暮らし方のコツを教わってください。
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